ツンデレ女子と陽キャ女子がただひたすらイチャイチャする話

依奈

第1章 友達

プロローグ 昼下がりの午後のこと


 とある私立高校には二人の美少女がいた。


 一人は西野にしの有紗ありさ

 クラスの中心的存在でいつも明るく、笑顔が絶えない。いわゆる陽キャで友達が沢山いる。そんな彼女にも気になる存在がいたが――その話は今は置いておこう。

 サラサラな茶髪のミディアムヘアーが特徴的で瞳も茶色。髪には青色のリボンを付けている。唇は小さく、妖艶で人々の目を引き付ける。そして笑顔が物凄く可愛い。女子でも惚れてしまうくらいだ。


 もう一人の美少女は市原いちはら叶乃かなの。彼女は有紗とは違い、どちらかと言えば陰キャ寄り。人を寄せつけないツンデレで友達は片手で数えられるくらいしかいない。

 腰まで伸びるストレートの白髪はくはつに宝石のように煌めく碧眼が特徴。


 そんな正反対な二人が仲良くなるなど、誰も思いはしないだろう。

 だが、そうなるにはとあるきっかけがあった――。



 昼下がりの午後のこと。

 有紗は叶乃を中庭に誘っていた。


「叶乃ー、一緒にお昼ご飯食べようよー」

「別に、いいですけど」


 中庭で一緒に昼飯を食べるのだ。

 叶乃は不機嫌そうな顔をしているが、これがデフォルトなので、気にしない。


 手を繋ぎながら、廊下を歩き、中庭を目指す。手を繋ぐといっても、普通の手繋ぎではなく、互いの細い指を絡ませて。絶対に離さない、とでもいうように。



 中庭に着く。


 叶乃が風呂敷を広げて、先に食べようとしていたので、有紗は急いで止める。


「ちょっと待って!」

「ん?」

「一緒に食べようよ」

「……」


 そうして二人、昼飯を一緒に食べる。


(あーんがしたい。でも、言えない)


 有紗はそわそわする。

 言おうとするけど、唇が少し動くだけ。


「あ――」

「……あ?」

「ううん、何でも」

「ひょっとして、あーん、してほしいんですか?」

「……っ! 何で分かるのっ?」

「私だってしたくてずっと我慢してたんですから。責任取って下さい。あーん」


 有紗は小さな口を大きく開く。

 叶乃は有紗の手作りの卵焼きを彼女の口に放り込む。


「どうですか?」

「美味しいよ。私からもあーん」

「んむっ。お、美味しいです」

「「うふふっ」」


 この瞬間が幸せだと二人は思った。

 くっつく肩と肩。美味しい食事。好きな人といる時間。


 そんなの、誰だって幸せだと思うだろう。



 不意に、叶乃が呟く。


「毎日、有紗が作ったご飯だけ食べていたいな……」

「え――」

「早くお弁当箱、片付けないと昼休み終わってしまいますよ」


 叶乃は頬を朱に染め、有紗を急かす。これは叶乃が照れている証拠だった。



 中庭には心地よい秋風が吹く。

 季節は10月。過ごしやすい絶好の季節だ。

 落ち葉が舞って、二人はそれを見る。


「……」

「……」


 少しの静寂の後。


 有紗が口を開いた。


「私達、友達だよね?」

「そうですが。何を今更」

「叶乃は何で私を友達と認めてくれたの?」

「それは――――だから」

「……!」


 有紗はそれを聞いて、どこか納得したような、拍子抜けしたような顔をした。


 二人は教室に向かって歩き出す。


 教室に着き、席に座ると有紗は一人呟いた。


友達、か……」


 哀愁漂う瞳で彼女は教科書を開く。

 彼女はちょっぴり黄昏れていた。


 まもなく、授業が始まる。



 これは最初はただの友達だった二人が、少しずつゆっくりと友達以上になるラブコメである。


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