異世界猫は、気まぐれに。
新佐名ハローズ
第1話 異世界猫、生誕す。
皆さんは物心っていうものが何時頃生まれたのかを覚えてはいるだろうか?
人とそれに類する種族であれば、寿命の差こそあれ自覚の芽生えは生後3~5年辺りかと思う。
尤も、該当者が記憶している一番最初の出来事という曖昧な基準でしかない故に、個体差も大きく且つ他者からすれば絶対的に必要な情報とも言い難い。
つまりはどうでもいいの一言で片付いてしまう話だけれど、そのような些細な事まで覚えていたりふと気になったりもするんだから、生き物って奴はつくづく不思議な存在だよねぇ。
え、肝心のお前はどうなんだって?
それは僕等が丁度生み出された頃、と言っておこう。
僕達姉弟は文明より遠く離れた大地の果てで、小さな仔猫の姿で生まれた。
当然生まれたばかりだ、目を開いて辺りを見回し、立ち上がろうとしてコテンと転ぶ弱々しげな黒猫の僕。
まだどうやって身体を動かせば良いのかの加減が掴めないんだから仕方が無いな、と思っていると。
『目覚めましたか、我が愛しき仔らよ』
頭上から聞こえる声に振り仰ぐと、そこには慈愛の表情でこちらを見遣る姿が。
『はい、お母様!』
元気良く答える長姉。まだ名前すらも無いのに、僕にはそれが一番上の姉だと何故だか分かっている。
『……はい』『はぁ~い!』『目覚めました。母上』『あたぼーよ!』『(こくり)』『??? ……お~』
姉の声を切っ掛けとして、各々がてんでバラバラに答えたり反応したり。僕のは長姉を飛ばした三番目の『~母上』ってやつね。
生まれた直後に喋れるなんてというのは一旦置いてもらって。実際ミャーミャーとかミーミーとかしか声は出ていないからね。
そこは律儀に猫と同じなんだなと思ったのはここだけの話。僕等の母は細かいディテールを詰めるのが好きなタイプらしい。
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