第六章⑥
周辺地域に住む人間が、街に出る、と言えばたいていこの辺りのことを差す。私鉄やJRのターミナルがごちゃごちゃと連なり、デパートや複合建築物が建ち並ぶ日本有数の地方都市。夕日がせわしなく道行く人々を明るく
「ここまでお連れして言うのも何ですが」
ゆっくりと横断歩道を
「今ならまだ引き返せますよ」
「いまさらだな」
すぐ横を歩く古泉の手が俺の手を
「すみませんが、しばし目を
いいだろう。俺は
古泉に手を引かれて、一歩、二歩、三歩。ストップ。
「もうけっこうです」
俺は目を開いた。
世界が灰色に染まっていた。
暗い。思わず空を見上げる。あれほど
交差点の真ん中に立ちつくす俺と古泉以外、横断歩道を
「次元断層の
古泉の声が静まりかえった大気の中でやけによく
「ちょうどこの横断歩道の真ん中が、この閉鎖空間の《
「半径はおよそ五キロメートル。通常、物理的な手段では出入り出来ません。僕の持つ力の一つが、この空間に
タケノコのように地面から生えているビルの数々には明かり一つ
「ここはどこだ」
むしろ、何だ、と言うべきだろうか。
歩きながら説明しましょう、と古泉はどうということもなさそうに、
「
道路を渡り切り、古泉は目的地が決まっているのか、確かな足取りで歩を進める。
「地上に発生したドーム状の空間を想像して下さい。お
雑居ビルの中に入る。人の気配どころかホコリ一つ落ちていない。
「閉鎖空間はまったくのランダムに発生します。一日おきに現れることもあれば、何ヶ月も
階段を登る。ひどく暗い。前を歩く古泉の姿がわずかでも見えていなければ足を取られるところだ。
「涼宮さんの精神が不安定になると、この空間が生まれるってことです」
四階建ての雑居ビルの屋上に出る。
「閉鎖空間の現出を僕は探知することが出来ます。僕の仲間も。なぜそれを知ってしまうのかは僕らにも
屋上の手すりにもたれて空を見上げる。そよとも風が
「こんなものを見せるために、わざわざ連れてきたのか? 誰もいないだけじゃないか」
「いえ、
もったいぶるな。しかし古泉は俺の
「僕の能力は閉鎖空間を探知して、ここに入るだけではありません。言うなれば、僕には涼宮さんの理性を反映した能力が
「お前の
「よく言われます。しかしあなたもたいしたものだ。この
俺は消えた朝倉とゴージャスな朝比奈さんを思い出した。すでに色々あったからな。
不意に古泉は顔を上げた。相対した俺の頭の向こう側に、遠くに
「始まったようです。後ろを見て下さい」
見た。
遠くの高層ビルの
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