第五章⑦
いきなりだ。
教室のすべてのものが
「そんな……」
「あなたはとても
長門の体中に刺さった
「だからこの空間にプログラムを割り込ませるのに今までかかった。でももう終わり」
「……
同じく結晶化していく両腕を
「あーあ、残念。しょせんわたしはバックアップだったかあ。
朝倉は俺を見てクラスメイトの顔に
「わたしの負け。よかったね、延命出来て。でも気を付けてね。統合思念体は、この通り、一枚岩じゃない。相反する意識をいくつも持ってるの。ま、これは人間も同じだけど。いつかまた、わたしみたいな急進派が来るかもしれない。それか、長門さんの
朝倉の胸から足はすでに光る結晶に
「それまで、涼宮さんとお幸せに。じゃあね」
音もなく朝倉は小さな砂場となった。
さらさら流れ落ちる細かいガラスのような結晶が降る中、朝倉涼子という女子生徒はこの学校から存在ごと
とすん、と軽い音がして、俺はそっちへ首をねじ曲げ、長門が
「おい! 長門、しっかりしろ、今救急車を、」
「いい」
目を見開いて天井を見上げながら長門は、
「肉体の損傷はたいしたことない。正常化しないといけないのは、まずこの空間」
砂の
「不純物を取り除いて、教室を再構成する」
見る間に一年五組が見慣れた一年五組へと、元通りに、そうだな、まるでビデオの逆回しだな、いつもの教室に戻っていく。
白い砂から黒板が、
壁だったところに
俺はまだ
「本当にだいじょうぶなのか?」
確かにどこにもケガがあるように見えない。あれだけ
「処理能力を情報の操作と改変に回したから、このインターフェースの再生は後回し。今やってる」
「手を貸そうか」
俺の
「あ」
わずかに
「
「……してないほうが
「眼鏡属性って何?」
「何でもない。ただの
「そう」
こんなどうでもいい会話をしている場合ではなかったのである。後々俺は、とことん
「ういーす」
ガサツに戸を開けて
「わっすれーもの、忘れ物ー」
自作の歌を歌いながらやって来たそいつは、よりにもよって谷口だった。
まさか谷口もこんな時間に教室に誰かがいるとは思わなかっただろう。俺たちがいるのに気づいてギクリと立ち止まり、しかるのちに口をアホみたいにパカンと開けた。
この時、俺はまさに長門を
「すまん」
聞いたこともない
「
俺は盛大なため息をついた。
「どうすっかなー」
「まかせて」
俺の手にもたれ
「情報操作は得意。朝倉涼子は転校したことにする」
そっちかよ!
などとツッコンでいる場合ではない。
これじゃ、長門が本格的に宇宙人か何かの関係者であることを納得せざるを得ないではないか。
おまけに、このままでは俺はこのイカレタ
はっきり言や、困る。
何かしらの問題に直面して困っている奴に横から半笑いで適当なアドバイスをするような、そんな役割を俺は望んでいたのだ。こんな俺自身がクラスメイトに命を
オレンジ色に染められた教室で、俺はしばし
これは……いったいどうしたものだろう? 俺は何を思えばいいんだ?
翌日、クラスに朝倉涼子の姿はなかった。
当たり前と言えば当たり前のことなのだが、それを当たり前だと思っているのはどうやら俺だけであり、岡部担任が、
「あー、朝倉くんだがー、お父さんの仕事の都合で、急なことだと先生も思う、転校することになった。いや、先生も今朝聞いて
と、あまりにも
ごん、と俺の背中を
「キョン。これは事件だわ」
すっかり元気を取り
どうする? 本当のことを言うか?
実は朝倉は情報統合思念体なる正体不明の存在に作られた長門の仲間で、なんか知らんが仲間割れして、その理由が俺を殺すか殺さないかで、なぜ俺かと言うとハルヒの情報がどうのこうので、あげくの果てに長門によって砂に変えられてしまいました、とさ。
言えるわけねえ。つーか俺が言いたくない。あれはすべて俺の
「
「だから
「そんなベタな理由は認めらんない」
「認めるも認めないも、転校の理由で一番ポピュラーなのはそれだろうよ」
「でもおかしいでしょ。いくら何でも昨日の今日よ。転勤の辞令から
「
「あるわけないわよ、そんなの。これは調査の必要ありね」
仕事の都合というのは言い訳で本当は
「SOS団として、学校の不思議を座視するわけにはいかないわ」
やめてくれ。
昨日の事件は俺に
そして俺はこの世界が非現実のシロモノだとは、どうしても思うことが出来ないでいるのだ。
まったく、人生の転機が訪れるには、十五年と数ヶ月は少々早すぎの気がしやしないか?
なんで俺は高一にして、世界の在り方などという
そうでなくとも、俺はまたまた
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