第五章⑥
「一つ一つのプログラムが甘い」
長門は平素と変わらない無感動な声で、
「天井部分の空間
「
対する朝倉も平然たるものだった。
「この人間が殺されたら、
「あなたはわたしのバックアップのはず」
長門は
「独断専行は許可されていない。わたしに従うべき」
「いやだと言ったら?」
「情報結合を解除する」
「やってみる? ここでは、わたしのほうが有利よ。この教室はわたしの情報制御空間」
「情報結合の解除を
言うが早いか、長門の握ったナイフの刃が
「!」
ナイフを放して朝倉はいきなり五メートルくらい後ろにジャンプした。それを見て俺は、
ああ、この二人本当に人間じゃないみたいだな、とか
一気に
空間がぐにゃりと
ただその空間そのものが
「離れないで」
長門は朝倉の
「うわっ!」
俺の頭を見えない何かがかすめて黒板を粉々に
長門がチラリと上を見上げる。その
「この空間ではわたしには勝てないわ」
まったくの
長門は俺の頭をまたいで立っていた。
「SELECTシリアルコードFROMデータベースWHEREコードデータORDER BY攻性情報
教室の中はもうまともな空間ではなくなっていた。何もかもが
「あなたの機能停止のほうが早いわ」
ヒュン、と風切り音。
長門のかかとが俺を思い切り
「なにす」
る、と言いかけた俺の鼻先を見えない槍が通過、床がめくれ返る。
「そいつを守りながら、いつまで持つかしら。じゃあ、こんなのはどう?」
次の瞬間、俺の前に立ちはだかった長門の
「…………」
つまり、朝倉は俺と長門に向かって同時に多方向から攻撃を加え、そのうちのいくつかを結晶化して無効にしたものの、迎撃しきれなかった槍が俺を襲い、俺を守るために長門は自分の身体を使用した、ということだったのだが、この時の俺にはそんなこと知るよしもなかった。
長門の顔から
「長門!」
「あなたは動かないでいい」
胸から腹にかけてビッシリと突き
「へいき」
いや、ちっとも平気には見えねえって。
長門は
「それだけダメージを受けたら他の情報に
揺らぐ空間の向こうに、朝倉の姿が見え隠れする。笑っている。両手が静かに上がり──俺の
「死になさい」
朝倉の腕が、さらに伸び、
右の
長門の身体から
「終わった」
ポツリと言って、長門は触手を
「終わったって、何のこと?」
朝倉は勝ちを確信したかのような口調。
「あなたの三年あまりの人生が?」
「ちがう」
これだけの重傷を負いながら長門は何もなかったように言った。
「情報連結解除、開始」
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