第四章③
その後、俺たちはひたすらに街をブラついて過ごした。ハルヒにはデートじゃないんだからと
これで手でも
『十二時にいったん集合。さっきの駅前のとこ』
切れた。
「涼宮さん? 何って?」
「また集まれだそうです。急いで
俺たちが腕でも組んで現れたらハルヒはどんな顔をするだろう。
カーディガンの前を合わせながら朝比奈さんは不思議そうに俺を見上げた。
「
十分ほど
「何かあった?」
「何も」
「本当に探してた? ふらふらしてたんじゃないでしょうね。みくるちゃん?」
朝比奈さんはふるふると首を
「そっちこそ何か見つけたのかよ」
ハルヒは
「昼ご飯にして、それから午後の部ね」
まだやるつもりかよ。
ハンバーガーショップで昼飯を食っている
無造作に手を
「また無印ですね」
白すぎる歯。こいつは笑ってばかりいるような気がするな。
「わたしも」
朝比奈さんがつまんだ
「キョンくんは?」
「残念ですが、印入りです」
ますます不機嫌な顔で、ハルヒは長門にも引くようにうながした。
クジの結果、今度は俺と長門有希の二人とその他三人という組み合わせになった。
「……」
印の付いていない
何が言いたい。
「四時に駅前で落ち合いましょう。今度こそ何かを見つけてきてよね」
シェイクをチュゴゴゴと飲み干した。
今度は北と南に別れることになり、俺たちは南担当。去り
そして今、俺は昼下がりの駅前で、
「どうする」
「……」
長門は無言。
「……行くか」
歩き出すとついてくる。だんだんとこいつの
「長門、この前の話だがな」
「なに」
「なんとなく、少しは信じてもいいような気分になってきたよ」
「そう」
「ああ」
「…………」
「お前、私服持ってないのか」
「……」
「休みの日はいつも何してんのさ」
「……」
「今、楽しいか」
「……」
ま、こんな感じか。
いい加減に
ソファでもあったら座って休もうと思っていたのだが、あるにはあるものの全部ふさがっていた。ヒマ人どもめ。
俺が
本は昔よく読んだ。小学生の低学年の
いつからかな。本を読まなくなったのは。読んでも面白いと思わなくなったのは。
俺は本棚から目に付いた本を
長門の姿を探すと、
スポーツ紙を広げてふんぞり返っていたオッサンがソファを
読む気もない本を読むのはさすがにノレず、
「おわ?」
飛び起きる。周囲の客が
バイブレータ機能をいかんなく発揮していた
『何やってんのこのバカ!』
金切り声が
『今何時だと思ってんのよ!』
「すまん、今起きたとこなんだ」
『はあ? このアホンダラゲ!』
お前だけにはアホとは言われたくないな。
『とっとと戻りなさいよ! 三十秒以内にね!』
無茶言うな。
乱暴に切られた携帯電話をポケットに戻して図書館に戻る。長門は簡単に見つかった。最初に見かけた棚の前を動かずに百科事典みたいな本を読みふけっていたからである。
そこからが一苦労だった。
何だか難しい名前の外国人が著者の
朝比奈さんは
「
またおごりかよ。
結局のところ、成果もへったくれもあるはずがなく、いたずらに時間と金を
「疲れました。涼宮さん、ものすごい早足でどんどん歩いていくんだもの。ついて行くのがやっと」
別れ際に朝比奈さんが言って息をついた。それから
「今日は話を聞いてくれてありがとう」
すぐに後ろに下がって照れて笑う。未来人ってのは
じゃ、と
「なかなか楽しかったですよ。いや、期待にたがわず面白い人ですね、涼宮さんは。あなたと
いやになるほど
一人残ったハルヒが俺を
「あんた今日、いったい何をしてたの?」
「さあ。いったい何をしてたんだろうな」
「そんなことじゃダメじゃない!」
本気で
「そう言うお前はどうなんだよ。何か面白いもんでも発見出来たのか?」
うぐ、と
「ま、一日やそこらで発見出来るほど、相手も無防備じゃないだろ」
フォローを入れる俺をジロリという感じで見て、ハルヒはつんと横を向いた。
「
きびすを返し、それっきり
俺も帰らせてもらおうかと銀行の前まで行けば、自転車がなかった。かわりに「不法
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