第二章⑥
「部長!」
「しっかりしてください!」
「気を確かに!」
糸の切れたマリオネットの動きで部長は首をうなだれた。ハルヒの片棒をかついでいる俺ではあるのだが、同情を禁じ得ない。
「最新機種はどれ?」
どこまでも
「なんでそんなことを教えなくちゃいけないんだよ」
「くそ! それだよ!」
そいつが指したタワー型のメーカー名と型番を
「昨日、パソコンショップに寄って店員にここ最近出た機種を一覧にしてもらったのよねえ。これは
あまりの
ハルヒはテーブルをぬって確認して回り、その中の一台を指名した。
「これちょうだい」
「待ってくれ! それは先月
「カメラカメラ」
「……持ってけ!
まさしく泥棒だ。返す言葉もない。
ハルヒの要求はとどまるところを知らない。各ケーブルを引っこ抜かせたハルヒはディスプレイから何からいっさいがっさいを文芸部室に運ばせたあげく配線し直すように求め、さらにインターネットを使用出来るようにLANケーブルを二つの部屋の間に引かせ、ついで学校のドメインからネットに接続出来るようにすることを申しつけ、そのすべてをコンピュータ研部員にやらせた。
「朝比奈さん」
すっかり手持ちぶさたになってしまった俺は両手で顔を
「とりあえず帰りましょう」
「ぅぅぅぅ……」
しくしく泣いている朝比奈さんを
まあ、ほどなく明らかになったのだが。
SOS団のウェブサイト立ち上げ。
ハルヒはそれがしたかったようだ。で、
「あんた」
と、ハルヒは言った。
「どうせヒマでしょ。やりなさいよ。あたしは残りの部員を探さなきゃいけないし」
パソコンは「団長」と
「一両日中によろしくね。まずサイトが出来ないことには活動しようがないし」
我関せずとばかりに本を読む長門有希の横で朝比奈さんはテーブルに
「そんなこと言われてもなあ」
言いながらも俺はけっこう乗り気だった。いやいや、ハルヒの命令口調に慣れてきたからじゃないぜ。サイト作りさ。やったことないけど、なんか
つまりそういうわけで、次の日から俺のサイト作成奮戦記が始まった。
とは言え、奮戦することもそうそうなかった。さすがコンピュータ研究部、あらかたのアプリケーションはすでにハードディスク内に収まっており、サイトの作成もテンプレートに従ってちょこっと切ったり
問題はそこに何を書くかである。
なんせ俺はSOS団が何を活動理念とした団体なのか
「長門、何か書きたいことあるか?」
昼休みにまで部室に来て本を読んでいる長門有希に
「何も」
顔も上げやしない。どうでもいいがこいつはちゃんと授業に出てるんだろうな。
長門有希の
もう一つ問題がある。正式に認可を受けていない同好会以下の
バレなきゃいいのよ、とはハルヒの弁。バレたらバレたで
この楽観的で、ある意味前向きな性格はちょっとだけだがうらやましい。
適当に拾ってきたフリーCGIのアクセスカウンタを取り付け、メールアドレスを
こんなんでいいだろ。
ネット上でちゃんと表示されていることを確認して俺はアプリを次々消してパソコンを
気配ってもんがないのか。いつの間にか俺の後ろを取っていた長門の能面のような白い顔。わざとやっても出来そうにない見事な無表情で長門は俺を視力検査表でも見るような目で見つめていた。
「これ」
分厚い本を差し出した。反射的に受け取る。ずしりと重い。表紙は何日か前に長門が読んでいた海外SFのものだった。
「貸すから」
長門は短く言い残すと俺に
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