第二章②
「文化系部の部室
「じゃあ、文芸部なんだろ」
「でも今年の春に三年が卒業して部員ゼロ、新たに
「てことは休部になってないじゃないか」
「似たようなもんよ。一人しかいないんだから」
これだけハルヒが
俺は声をひそめてハルヒに
「あの
「別にいいって言ってたわよ」
「本当かそりゃ?」
「昼休みに会ったときに。部室貸してって言ったら、どうぞって。本さえ読めればいいらしいわ。変わってると言えば変わってるわね」
お前が言うな。
俺はあらためてその変わり者の文芸部員を観察した。
白い
しげしげと
レンズの奥から
「
と彼女は言った。それが名前らしい。聞いた三秒後には忘れてしまいそうな
長門有希は
「長門さんとやら」俺は言った。「こいつはこの部屋を何だか
「いい」
長門有希はページから視線を
「いや、しかし、多分ものすごく
「別に」
「そのうち追い出されるかもしれんぞ?」
「どうぞ」
「ま、そういうことだから」
ハルヒが割り込んできた。こっちの声はやたらに
「これから放課後、この部屋に集合ね。絶対来なさいよ。来ないと
桜満開の笑みで言われて、俺は不承不承ながらうなずいた。
死刑はいやだったからな。
こうして部室を間借りすることになったのはいいが、書類のほうはまだ手つかずである。だいたい
「そんなもんはね、後からついてくるのよ!」
ハルヒは高らかにのたまった。
「まずは部員よね。最低あと二人はいるわね」
ってことはなんだ、あの文芸部員も頭数に入れてしまっているのか? 長門有希を部室に付属する備品か何かと
「安心して。すぐ集めるから。適材な人間の心当たりはあるの」
何をどう安心すればいいのだろう。疑問は深まるばかりである。
次の日、
ハルヒは「先に行ってて!」と
通学
部室にはすでに長門有希がいて、昨日とまったく同じ姿勢で読書をしておりデジャブを感じさせた。俺が入ってもピクリともしないのも昨日と同じ。よく知らないのだが、文芸部ってのは本を読むクラブなのか?
「……何を読んでんだ?」
二人して
「
長門有希は無気力な仕草で
「ユニーク」
どうも訊かれたからとりあえず答えているみたいな感じである。
「どういうとこが?」
「ぜんぶ」
「本が好きなんだな」
「わりと」
「そうか……」
「……」
沈黙。
帰っていいかな、俺。
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