第一章②
このように一瞬にしてクラス全員のハートをいろんな意味でキャッチした涼宮ハルヒだが、翌日以降しばらくは割とおとなしく一見無害な女子高生を演じていた。
いや、この高校に来るのは、もともと市内の四つの中学校出身の生徒たち(成績が普通レベルの奴ら)ばかりだし、東中もその中に入っていたから、涼宮ハルヒと同じ中学から進学した奴らもいるわけで、そんな彼らにしてみればこいつの
ケチのつき始めのドミノ
だってよ、涼宮ハルヒは
もちろん話題はあのことしかあるまい。
「なあ」
と、俺はさりげなく振り返りながらさりげない笑みを満面に浮かべて言った。
「しょっぱなの自己紹介のアレ、どのへんまで本気だったんだ?」
「自己紹介のアレって何」
「いや、だから宇宙人がどうとか」
「あんた、宇宙人なの?」
大まじめな顔で
「……違うけどさ」
「違うけど、何なの」
「……いや、何もない」
「だったら話しかけないで。時間の
思わず「すみません」と謝ってしまいそうになるくらい
何かを言い返そうとして結局何も思いつけないでいた俺は担任の岡部が入ってきたおかげで救われた。
負け犬の心でしおしおと前を向くと、クラスの何人かがこっちの方を興味深げに
なんか、シャクに
とまあ、おそらくファースト・コンタクトとしては最悪の部類に入る会話のおかげで、さすがに俺も涼宮ハルヒには
だが理解していない観察眼のない奴もまだまだいないわけではなく、いつも
だいたいそれはおせっかいな女子であり、新学期早々クラスから
「ねえ、昨日のドラマ見た? 九時からのやつ」
「見てない」
「えー? なんでー?」
「知らない」
「いっぺん見てみなよ、あーでも
「うるさい」
こんな感じ。
無表情に応答するならまだしも、あからさまにイライラした顔と発音で
安心したまえ、言ってない。おかしいのは涼宮ハルヒの頭のほうさ。
別段一人で飯
涼宮ハルヒの話題が出たのはその時である。
「お前、この前涼宮に話しかけてたな」
「わけの解らんこと言われて追い返されただろ」
その通りだ。
谷口はゆで卵の輪切りを口に放り込み、もぐもぐしながら、
「もしあいつに気があるんなら、悪いことは言わん、やめとけ。涼宮が変人だってのは
中学で涼宮と三年間同じクラスだったからよく知ってるんだがな、と前置きし、
「あいつの
「あの宇宙人がどうとか言うやつ?」
焼き魚の切り身から小骨を細心の注意で取り除いていた国木田が口を
「そ。中学時代にもわけの解らんことを言いながらわけの解らんことを散々やり
「何だそりゃ?」
「
そん時のことを思い出したのか谷口はニヤニヤ笑いを
「
「あ、それ見た覚えあるな。確か新聞の地方
と国木田が言う。俺には覚えがない。
「載ってた載ってた。中学校の校庭に
「その犯人があいつだったってわけか」
「本人がそう言ったんだから
「何でそんなことしたんだ?」
「知らん」
あっさり答えて谷口は白飯をもしゃもしゃと
「とうとう白状しなかったそうだ。だんまりを決め込んだ涼宮のキッツい目で
俺の
たぶん涼宮ハルヒは本気でUFOあるいは悪魔または異世界への扉を呼び出そうとしたのだろう。ひょっとしたら一晩中、中学の運動場でがんばっていたのかもしれない。そしてとうとう何も現れなかったことにたいそう
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