第3話 畑との出会い

アルコとコンテは、のどかな街並みを抜け、やがて郊外の開けた風景へと足を進めた。そこは、広大な畑が広がる穏やかな場所だった。太陽は優しく地面を照らし、穏やかな風が穀物の波を作っていた。その畑で、一人の老人が黙々と作業に励んでいるのをアルコは見つけた。


老人は、地面を耕したり、植物に水をやったりしている様子だった。アルコは、何となくその場に引き寄せられるように、老人の作業を手伝うことに決めた。コンテはアルコの肩から飛び降り、近くの木の枝に腰掛けて二人の様子を見守った。


アルコが手際よく土を掘り起こすと、老人はふと彼を見て、温かな笑顔を浮かべた。「若い兄さん、ありがとう」と老人は感謝の言葉を述べた。


「いえ、何でもありません。少しでもお手伝いできてうれしいです」とアルコは返した。その瞬間、彼はこの世界の人々との小さな繋がりを感じ、心が温かくなった。


老人は、アルコに作業のコツを教えながら、この畑で育てている作物について語り始めた。ここでは、季節ごとに様々な野菜や果物が栽培され、それぞれがこの地域独特の味を持っているという。アルコは、その話を聞きながら、この異世界での生活の深みを少しずつ理解し始めた。


作業が一段落したとき、老人はアルコとコンテを自宅に招き、手作りの果物ジュースを振る舞ってくれた。その味は、アルコがこれまでに経験したことのない、新鮮で濃厚なものだった。老人は、この地で生まれ育ち、何世代にもわたって家族で畑を守り続けていると語った。その言葉には、土地への深い愛と誇りが込められていた。


アルコは、この短い時間の中で、畑仕事の価値と、この土地の人々の生活に対する情熱を学んだ。老人との出会いは、彼にとってこの新しい世界を理解する貴重な機会となった。


夕日が畑に長い影を落とし始めた頃、アルコとコンテは再び旅を続けるために立ち上がった。老人に別れを告げ、二人は次の目的地へと足を進めた。その背中には、新たな経験と出会いに対する期待が満ち溢れていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る