第18話 早朝




 行きたくない。当然である。

 一週間に2日しかない貴重な貴重な休日なのだ。

 こんな罰ゲームなんかに使いたくは毛頭ない。それでも起きなければならない。

 手を伸ばしあくびをする。

 そして顔を洗い、寝癖を直す。

 どれだけ行きたくないとごねても約束は約束だ。

 すっぽかすことも考えたがものすごい圧にかけられている俺が容易に想像できたのですぐにでもその考えは捨て去った。

 否、捨て去る他なかった。


 パンが焼けたらしい。そして食べる。

 いつもは朝はご飯派だが今日は急いでいるので仕方がない。

 しかしこう女子と二人で何処かに行くってデートみたいじゃないか?

 邪念を捨て去ってなお捨て去り切れずそんな考えが頭をよぎる。

 そもそも毎回思うのだが、俺はなぜ集合時間よりも毎度のこと早くに来てしまうのだろうか。

 それ自体はいいことなのだが、早く来たときに限ってみんなはギリギリに来る。

 つまり、全員時間前行動ができていない。

 しかし俺だけが守っている。これはハブられているからだろうか。

 それ以外に理由が見つからない。

 普通ならば昨日の藤室のように10分、少なくとも5分前には着いているやつが一人二人はいるだろう。

 よって、もう少し退屈な時間がすくないはずだ。

 それなのにだ。

 歯を磨きながらそんな事を考える。

 そもそも俺はボッチなので、その分スマホの使用頻度が多く、スマホのバッテリーの減りが早い。

 それに加えて通信データも毎月かつかつである。

 そこに待ち時間分のスマホの使用を含めたらどうなるだろうか…もちろん、どちらともなくなる。

 それはボッチにとってまさに“GAME OVER”に等しい。


 着替えをして、荷物を諸々整える。

 そもそも何でこんな早朝からなのだとため息をつく。

 普通に9時集合とかでいいだろ。

 わざわざ何で7時半に集合するんだよと思った。

 しかし、舞山の要望なので断るわけにはいかなかった。

 それとなく集合時間を変えれないか聞いてみたら、普通に怒られたし。

…これは断るわけにはいかなかったというよりは強制的させられたという方が正しいだろうか。

 嫌そうに違いない。

 そして誰にも聞こえない声で愚痴をいう。

 そうしている間に準備ができた。今は午前7時だ待ち合わせの時間の30分前である。

 歩いていけば、丁度10分前にはつくだろう。


「行ってきまーす」


 父が爆睡しているだろう家に僕の声が響く。

 本当に憂鬱である。

 それにしてもこんな格好をするのは久しぶりだ。

 じいちゃんが亡くなって以来この髪型はしないと思っていた。

 あの日からじいちゃんを真似るようになったからだ。

 やはりそれは間違っていたのだろうか。

 無造作ヘアより似合っている気がする。

 それはさておき、遅い。

 約束した本人が忘れるなよと思うがただ待つしかないので、LIMEに文句を送ってただ待つ。


『ごめん、遅れた?』


 すごい時間丁度に来やがった。

 舞山って俺を今日連れ出した本人だよな。

 何でその当人のほうが遅いのだろうか。

 おかしいに決まっている。


「いや?時間ピッタリだったな。うんだった。全然気にしてないよホント?」


『怒ってるよね?ごめんって。謝るから〜。ごめん。ね?許してよ〜』


全然ど突い平気たろう大丈かコラ夫だから。」


『うわ〜ん。ゆう君がイジメるよ〜』


「イジメてない。今度からは時間に余裕を持ってくるように」


『はーい…って何で怒られてるの私!?そこまでのことじゃないよね?』


「…」


『圧がすごいよ?ちょっと冗談キツイよ〜』


(圧が強い?お前の圧にいつも潰されている俺の圧が?ないない。)


「ま、冗談はよしてそろそろ行くぞ。にしてもここのモール朝の7時半から空いてんだな。普通のショッピングモールは朝の9時から開くものだと思うんだが…」


『そうだね。ここ何故か開くの早いよね。どうしてだろ?』


「知らねーよそんなもん。」


『あはは。だよね~私もだから。』


「それ聞いてきた本人がもし知っていて、それで知識ひけらかしてきたら本当にうぜぇわ。」


『そうかもね。あっそろそろ入ろ?開いたみたいだし。』


「そうだな。袋は持ってきたか?」


『あ。』


(…マジか、こいつマイバックおいてきたのかよ。服とかいれる袋ならまだしも、買い出しもあるってことは食品とかも買うだろうしあったほうがいい。あとレジ袋ってかさばるし。えっ?そうだよね?え?もしかして俺だけなのかな?こんなこと思っているのって。)


「はぁ~、ほらよ。」


『うん、ありがと。頼りになるね〜』


「…そろそろ行くぞ。」


『えっ?ちょっと待ってよ〜…そういうところは気を使えないんだね。』


「うっせ」


『あ〜!単純な悪口ぃひど〜い』


 そのまま俺たちはモールに入るのだった。

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