雨に浮かぶ花を眺める君へ、輝かしい想い出の日々を。
電源コード
プロローグ
雨が嫌いだった。
祖父が死んだときも、両親が離婚したときもあいも変わらずに降っていた雨が。
今でもあまり好きにはなれない。
あまりいい思い出もないし無理もないと思う。
そんなことを考えながら、隣町の公園まで車を走らせる。
我ながらつまんないな。そんなことを思う。
ふと、雨がやんだ。
それでも降り出しそうな雰囲気は依然として残っていたけど。
そうして、僕は車を駐めた。
毎年この季節になると僕は決まってこの公園に来る。
其処に咲く睡蓮を見に。
どこか懐かしさを感じながら、自分らしくないなって思ってしまう。
あの当時は‘‘俺’’って自分のことを読んでいたし、その上僕はもっと明るい性格だったと思う。
___君は今どうしているのだろうか。
分かりようもない。
もし分かったとしても僕は決して知ろうとはしないだろう。
僕意外とヘタレだから。
くだらないことを考えてるうちに雨が降ってきた。
僕は慌てて傘をさす。土砂降りの雨だった。
もう帰ろうと思い、帰路に立つ。
昔あった横顔を思い出しながら。
_______
_______
高校一年の冬、突如父の仕事の都合で転校となった。
時期が時期だったのもあるだろうが、俺は急な環境の変化に戸惑うばかりでいつの間にかクラスで孤立していた。
いわゆるボッチというやつだ。
俺なりに頑張ってはいたけど、どうやらから回ってしまったらしい。
誰一人として、俺に好印象を持つものはそこにはいなかった。
今になって思えば、彼らはきっと俺みたいな部外者がしゃしゃり出てくることが気に食わなかったのだと理解できる。
グループの輪に何彼構わず入ろうとしている俺は鬱陶しく写ったに違いない。
そうして俺はクラスから嫌がらせを受けるようにもなった。
そんな最中だった。
両親が離婚した。
前から父と母の仲が悪くなっているのには気づいていた。
でも、俺は転校で頭がいっぱいいっぱいだった。
両親のことなんかを気にすることができなかった。
今ではそれをとても後悔している。
”両親の離婚”
流石にそれはないと心の中で満身していたのだろう。
とても辛かった。
泣きそうになった。
でも、泣いたらいけないって思った。
祖父の言葉を思い出す。
『優が泣くときのは、たった一人、心を許せる相手を見つけてからにしろ。それでも、我慢できるときはなくな。そうすればきっと、優は人生に価値があったと思える。他ならないこのジジイがいうんだ。間違いない』と。
今でも、その言葉の真意はわからない。てかわかりようがない。
だってじいちゃん凄くかっこつけたがる性格だったし。
この言葉がかっこつけの言葉でないとも断言できないから。
そんな、合っているのかどうかすら分からないそんな言葉が僕を泣くことから強く引き止めた。
でも、その我慢が俺の苦しさ、寂しさ、負の感情を増大させていく。
現実なんてクソだ。
そう思わずにはいられなかった。
それ以降、俺は唯一祖父が褒めてくれた勉強にのめり込むようになった。
元々通っていた学校でも一桁をキープしていたので、そこからはただやるだけだった。
俺が学校に転校してきた2月半ばからはや一ヶ月半が経過した。
明日は、新学年。
新しいクラスになる。
でも何も期待しない。
そのほうが後々自分が傷つかなくていい。
もう慣れた。
自分の低いテンションを無理やり上げるため、いつものおふざけでも考えよう。
いや、もう寝たほうがいいか…
_______
スマホのアラームが鳴る。
目が覚める。なぜか嫌な予感がする。その予感はすぐに当たることになる。
とっさに見たスマホには
"08:01"
俺は、飛び起きた。
「やっべぇ〜、あと20分もないじゃん。
遅刻するのだけはマジ勘弁何だけど〜〜〜」
急いで、登校の支度をする。
そうして俺はゼリーを片手に猛スピードで走り出した。
「セーーフ、あ〜間に合って良かったあ〜」
半ば焦っていたせいか、俺はかなり大きな声でそう口にした。してしまったのだ…
「おい、あいつ大声だしてるぞ…」
「うっわ〜、椎名じゃんマジうるせー」
「陰キャが大声出すとかキッモ〜」
「はぁ、まじでうるさいからやめてほしい。」
「ホントそれなー」
みんなが口々に俺の悪口をいう。
あんな大声を出してしまった手前、こうなることは予想していたが、やはりどこかくるものがある。
少し泣きたい気分になった。
(ほらさ、俺泣き虫だから。)
今日は快適だー、机に何もイタズラされてなくて嬉しいーわーいわーい。
我ながら悲しくなる心を抑えつつ、席につく。
そうして僕への当てつけを聞き流しながら、俺は担任が来るのを待った。
(早くきてよ先生、あなたが来れば、俺なんて話題に上がらないから。ね?ね?)
少し暇だった俺は、どうせ陰口だろっと思いながら、クラスの話に聞き耳を立てた。
決して盗み聞きしたのではない。これからの生活のために参考までに聞いただけだ。
(えっ?そうだよね?)
「クラス替え楽しみ〜 また同じクラスだといいね」
「そうだね〜 あと椎名とだけはまた同じクラスにはなりたくないw」
「わかる~w」
扉が開く音がした。担任が来た。
(ナイスだ先生!ありがとう僕の救世主様〜)
なんて馬鹿なことを思いながら、担任の方に目を向ける。
「お前ら〜話したいのは分かったが早く席についてくれ。HRが始めようにも始められん。このあとすぐに始業式だから、時間大切になー」
担任の芸術作品のようなイケボが響いた。
そうしてHRが終わり、整列する。
ふと女子の会話が耳に入る。
「昨日のドラマ見た〜?今回のすぐユメまじで良かったよね。特にさ、主演の俳優。いいなー私もあんな風に後ろからイケメンに抱きつかれたーい」
「わかる~ 顔も先生といい勝負してたよね!」
「うんうん、マジでかっこよかったマワルさま♡」
今、会話に上がっているであろう俳優
今世間で大注目の若手俳優であり、ドラマにもバラエティーにも引っ張りだこ。そんな完璧スペックの国宝級イケメン俳優である。
(てか、よく考えればこれと張り合う担任とは一体…? どう考えても、教師じゃ勿体ないスペックしてるよな〜)
担任が何かを話していた。
(クッソ〜担任が何話してたか聞こえなかったじゃないか)
そんなことクソほど思っていないが、とにかく、分かったことがある。分かってしまったことがある。
俺の居場所なんてここにはなかったってことだ。
こんな風にワイワイした雰囲気が嫌だった。
友達がいないのがこんなに辛いなんて思わなかった。
居づらい。気まずい。
やっぱり気まずいのは嫌だ。誰だってそうに決まってる。
そんなこんなで始業式が始まり、俺は寝た。
勿論校歌のあとだよ。一人だけ目立つの嫌だもん。
でも結果的に目立ってしまった。
この学校には悪しき風習がある。
その一つが
『全校集会の校長の話の後にあるインタビュー』だ。
そう、他の人も当てられる確率はある。うちの高校は訳700名程が在籍している。
それなのにだ。
いわなくともわかるだろう。つまりそういうことだ。
全く話を聞いていなかった俺は、あることないこといって何とかならないかな~って感覚でインタビューに臨んだ。
その結果、酷い目にあった。学校中の笑いものだ。あれは自分でもひどかったと思うし仕方ないと思えるけれどもあんまりだ。
(じいちゃん。泣いていいよね?ね?)
だめだといわれた気がした。辛い。胃がきりきりする。
そんなこんなで俺の高校生活は考えられる限り最悪のスタートを切ったのだった。
やっぱ、現実なんてクソじゃん。
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