義妹は世話焼き

カエル

第1話 プロローグ

「凌空、ちょっと良い?」

俊太と勇太を寝かしつけて自分の部屋に戻るためにリビングに降りて来たタイミングで陽子おばさんに話しかけられた。

コク。

「とりあえず、そこに座って。」

コク。

僕は頷いて陽子おばさんの前に座った。

「私ね、再婚しようと思うの。いい?」

陽子おばさんは真剣な顔で聞いてきた。

【僕は良いけど、俊太と勇太はどうかな?】

僕は机の上に置いてあるホワイトボ-ドに書いて陽子おばさんに見せた。

「そうね。今日、凌空がお風呂に入っている時に聞いてみたんだけれど、再婚について良く分かっていないみたいで…。最終的に新しくお義父さんができるけどいい?って聞いたらお義父さんって何?って聞き返されちゃったの。」

なるほど、確かに俊太と勇太が1歳になる前に彼らの父親は事故で死んでしまったから。記憶にないか。そして、近所に俊太と勇太の同世代どころか僕と同世代の子どもすらいないから友達のお父さんと休日に遊んでいるというのもないよね。そうなると、お父さんが身近にいないからお父さんって何ってなるか。

【どう説明したの?】

僕はホワイトボ-ドに書いて再び見せた。

「何て言おうかと悩んで、お母さんにとってのおじいちゃんだよ。と説明したよ。」

それはおじいちゃんであってお父さんの説明として理解されないのでは?と思うがどうなんだろうか?

「そしたら、凌空兄ちゃんが良いって言ったらいいよ。って言われたの。だから凌空に聞いているの。」

相変わらず、俊太と勇太は僕に大事な決断を押し付けるよね。まあ、2人とも僕が親しくしている大人なら例え、初めてあった人でも寄っていって話すけど、僕が親しくしていない大人は何度会っても近寄ろうともしないなぁ。陽子おばさんに聞いたら、俊太と勇太のその人が安全かどうかの見分けをする判断基準が僕が親しくしているかどうかなんでしょう。と言っていたからそういうことなんだろう。

【僕はいいよ。でも、できるなら見てみたい。】

僕には陽子おばさんの人生に口出しする権利は無いし、俊太と勇太にお義父さんができることは良いことだと思ったので了承した。

「分かったわ。」

陽子おばさんは笑顔で答えてくれた。

「ところで、やっぱり凌空はまだ声がでないのね。」

【出ない。どうやって声を出していたかすら忘れた。】

「そう。」

陽子おばさんは少し悲しそうな顔で言った。

【俊太と勇太に何か伝える時はスマホの音声読み上げ機能で入力した文章を読み上げて伝えてるから特に困っていないし、気にしなくても大丈夫だよ。】

僕は陽子おばさんを元気付けようと書いて見せたが、

「声が出るようになるといいね。」

と言われた。声は明るいけど、顔が非常に苦しそうでなんとも言えない気持ちになった。これ以上ここにいてはますます陽子おばさんが苦しみそうだったので、

【おやすみなさい。】

とホワイトボ-ドに書いて自室に戻った。

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