白猫は大変

 今日も患者さんが来ないうちに、日向ぼっこ。看護師のたまり場だけど、ここの窓が一番のお気に入り。


 気持ちいい。気持ちよすぎる。ずりずりしちゃお。


「ギャッ!!」

「ミミ、大丈夫?」

「また落ちたの? おバカちゃんですねぇ」


 ソラノ、合格。でも近寄るんじゃないわよ!

 ハラノ、覚えておきなさいよ!


 隙あらば触ってこようとするソラノから逃げて、ご飯が並ぶ棚の下へ避難する。ここなら誰も入ってこられないからね。

 あとね、落ちるのには理由があるの。

 窓の乗るところ、狭すぎ。

 なんでもっとこう、あたしが過ごしやすくしないのかしらね?


「ミミってほんと、日向ぼっこに夢中になりすぎなんですね」

「猫はみんな好きだろうけど、ミミは白猫だからあんまり日向ぼっこさせてあげられないし。だからあのテンションなんでしょ」

「なるほど。色素の薄い子は日光皮膚炎で大変ですもんね」


 そうそう、そうなのよ!

 耳も目も口も、他のところも全部かゆい!

 この時期だけハゲるし。

 でもね、だからこそ、限られた時間で楽しまなきゃいけないの!!


 こういう時だけ、他の色の猫が羨ましくなる。でもいいの。今日も綺麗だねってセンセーが言ってくれるから。


「でもさ、落ちるのはミミが間抜けだから。もっと言うと、太ってるから!」


 ハラノ!!!


 思わず睨みつけたけど、ぜんっぜん気づかない。ゲラゲラ笑ってるし。あんたみたいな鈍感女に言われたくないわ!

 それなのに、新入りまで笑い出した。


 ソラノ!!!

 お前も新入りのくせに大先輩の悪口で笑ってんじゃないわよ!!


 飛び出して引っかいてやろうとすれば、ソラノが立ち上がった。


「そろそろ休憩終わりますし、ミミ、お部屋に戻してきますね!」

「おぉー! ソラノちゃん、チャレンジャーだよね。無理ならアタシやるからね」

「はーい」


 バカ女がひょいっと覗き込んでくる。

 ニヤニヤしてんじゃないわよ、気色悪い。


「おいでーミミー」


 このバカ女!!

 あんたなんかにあたしは触らせないからね!!


「っと! あぶなー! 今日はセーフです!」

「機嫌悪そうだし、これ以上は無理っぽいね」


 思いっきり引っかこうとしたのに、かわされた。


 なにこのバカ女。

 あたしの教育を受けたくないわけ?


 ショックを受けていれば、ハラノがすごい勢いで手を突っ込んできた。しかも首根っこまで掴まれたし!


「ミ゛ィィイイーー!!」

「はいはい。行くよー」

「さすがはハラノ先輩です!」


 なにがさすがなのよ!!

 先輩はこのあたしでしょ!?


 このあと、あたしの悔しさはどこにもぶつけられなかったから、ふて寝した。

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