第52話 マリオネット

「彼の失踪は言うまでもなく大きな波紋を呼んでいます…」


バーのマスターはテレビを消した。カウンターでは青年が酒を飲みクダを巻いている。


「俺なんて只の社畜だよ」


そう話す彼の隣から声がした。初老の男の声だ。


「俺なんて世界一偉いのに結局は庶民どもの言いなりさ」


青年は嘲笑った。


「世界一?大きく出たな」


声の主に目をやるのもバカらしい。隣からまた声がする。


「お前、ホワイトハウスって知ってるか?」


隣を見ると、どこかで見た初老の金髪の白人がいた。すこし髪が白くなっている。


「何で俺が日本語なんか…」


外国人と思えぬ流暢な発音。


テレビがまた点く。


「親日家の大統領の失踪に世界は…」


バーテンダーの青年はBOØWYが最後に放ったヒット曲をハミングしている。

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