寝て、覚めて、夢を見る

@_ashtrayx3

謳歌せよ

思えば味気のない人生であった。適当な高校に進学し中学時代で培ったはずの努力を忘れ、ついには大学入試に失敗した。かといって何かに本気で取り組んだわけでもなく怠惰な生活に明け暮れるのみであった。そんなつまらない自分の人生を反省し、私がごく稀にいる一流のクズであること戒めるために自伝として記録し残そうと思う。




高校入試が差し迫った中学3年生の冬、私は人並み以上には勉学に勤しんでいた。というよりこの時期に限定せずとも模試や中間・期末テストに向けた努力は怠らなかった。幸いにも自分に合った正しい努力ができていたようで、無事に志望校に合格し、市内でも偏差値の高い高校に進学することになった。同時に自分、ひいては他者との闘争に勝利した優越感を蓄積していくことになるのは誤算だったが。




ちょうどこの頃かもしれない。勉強から一時的に解放された安堵感からか、また冗談でも好きとは言えない勉強の引き続き頑張る理由を見つけることができなかったためか。ピンと張られていた糸が、みるみるとほつれていき、活力を失っていくような…そんな感覚に襲われた。未来を見据えずに高校入試に挑んだ私は、それを人生のゴールに置き換えていた。無論、どこの高校に通っていたかで人生は決まらない。中等・高等教育の中で”自分で目標を立てそれに向けて努力すること“を習慣化させ、大学生ならではの自由さで様々な分野での経験を積み、自己研鑽をし、やっと社会人。当時の私には気づくことが出来なかった。




高校3年間、貴重な貴重な3年間。紡ぎ直す機会は沢山あった。もし当時の私が堕落せず、何枚にも重なっていた分厚い障壁に目を背けず、立ち向かうことができていたならば、今の私は何事にも真摯に取り組む人間になれていたのだろうか。空虚な空虚な3年間。後悔しても、もう遅い。




テスト期間に突入しても教科書すら開かない。赤点回避で万々歳。結局訪れなかった“次のテストで本気出す”。学業ではこの有り様でも、世間的には上位校に通っていたので外に出ると羨望の眼差しを浴びた。謙遜しつつも内心心地良かった。いくら怠けても学校の看板が守ってくれるのだからたまらない。こうなると不登校になるのにも時間はかからなかった。別にいじめられたわけでも、クラス内カーストの下位に位置したわけでもない。ただ単に面倒臭い、それだけ。そんなクズ人間でも


「〇〇君の高校めっちゃ頭いいとこじゃん!」


「流石〇〇君!流石進学校!」


さらに言えば私の素性を知っている別の学校の友人達でさえ


「〇〇は本気出してないだけっしょ?お前ならどうせテストとか余裕じゃん!」


なぜ慢心せずにいられるだろうか、いられるわけがない。自分自身が崇高な人間であると思いだす。口にはしなかったが他校の連中が馬鹿に見えていた。甘くみていた。どこへ行っても持ち上げられていた凡夫なクズ人間の自尊心は、膨らみ続けるばかりであった。




結局、大した努力もせず余裕だろうとたかをくくったまま大学入試に挑み、見事落第。こう書き綴っていくと改めて当然の結果だと思う。前述した通り、私は沢山の人に持ち上げていただいたのだが、母は違った。“自分の行いは自分に返ってくる。何事においても”と何度も何度も諭してくれた。今、初めて、しっかりと、実感している。私は特別な人間などではなかった。いつしか周りからの賞賛の声をも恣意的に解釈するようになり、自分の能力と釣り合った最低限以下の努力で結果を狙うようになっていた。




ここまで読んでくれた人達、本当にありがとう。そして冒頭に“自分を戒める”とか、長々と稚拙な文を書き続けたわけだが、実のところあまり反省していない。どうやら私は根っこからのクズのようだ。今はまだ実家に居させてもらっているが来月から家に金を入れろとのこと。さもなくば家から追い出すとの脅迫付きで。18の社会を知らないガキに言うセリフか?イライラする。私は働きたくない。願わくは穀潰しになりたい。私は甘い蜜を吸いすぎて、中毒になってしまった。




もし読者のみなさんの中に私と同じ境遇の人間がいたらすっっっごく嬉しい。私は私と同じ境遇の人達に、社会的弱者とか、障害とか、なんたらかんたらの少数派とかの手っ取り早く利用できそうな、小難しい思想を絡めた言葉で革命でも起こしてもらって、世界を俺様基準の国にでもして欲しい。生きることそのものにスタミナが足りない。動くのは疲れる、人と会うのは疲れる、考えるのは疲れる…あと60年もこれだ。それでも死にたくはない。いや、死ぬ勇気がない。腐っている。今の私は。もう、取り返しのつかないところまで。




fin


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