クッキーとギター

ぽぽぽっぽ

角砂糖

サクサク

「それでは聴いてください」

恋に落ちたのはその数秒後だった。


悪い予感に起こされ、時計を見る。そこには7:48と木の文字。

「まただ...」

一瞬絶望する。ただ、開き直るのにそんなに時間はかからなかった。

バス停までの道に曲がり角は無く、朝食はご飯派。そして、諦めているせいで走ってない。残念ながら運命の出会いは起こりえない。


案の定、何もなくバス停に着く。すると、さほど時間も掛かからずバスが来る。ふと腕時計を見る。始業時間まで、あと3分。

バスに揺られ、イヤホンを耳に突っ込む。音楽を聞くと、ほんの少し罪悪感を無くしてくれる。

好きな曲がかかる。ボーカルの華やかな声、ギターのクリーンな響き、ドラムの細かいリズム、ベースの安定した重低音。全てが合わさり脳へ届いてくる。

「ふんふ〜ん〜♪」

少し口ずさんでしまい、ちょっと恥ずかしくなる。

20分位して駅に着く。電車は予定どおりやって来た。高校は都会とは反対方向なので、乗客は少ない。いつもと同じく、ドア横に寄りかかる。乗車してから二曲程聞き終わって、ふと前を見る。そこには本を読んでいる同じ制服の男子がいた。


駅に着き、学校へゆったりと向かう。結局、10時過ぎに到着した。

「もう、三時間目か」

教室に入ると、誰もいない。今の時間は芸術。急いで音楽室に向かう。


「お昼の放送を始めます。」

四時間目の授業が終わり、休み時間に入る。親友の未紗みさ梨央りおの二人のもとへ向かい、他愛もない会話をしながら弁当を食べる。

「そういえば、来週に軽音のライブがあるんだよね」

未紗みさは軽音部でベースをやっている。ちなみに、梨央りおはバスケ部で、私は帰宅部だ。

「まぁ、自分はあんまり練習してないんだけど...」

「そういって何でも保険をかけて、結局成功して来たくせに」

「ばれた?」

また二人の馴れ合いが始まった。私はそれに口出しをせずに聞いていた。

「あれ?そういえば、いつ来たの?」

梨央りおが言う。二人はどちらも美術選択。だから、私がいつ来たか知らない。

「ん?三時間目」

普通に言葉を返す。二人とも驚いた顔をして、

「遅刻指導大丈夫なの?」

と聞いてくる。すると、担任の伊藤いとう先生が近づいてくる。

佐々木ささき、次遅刻したら指導だから気をつけろよ」

やっぱり注意された。私はちょっと反省しているふりをして、

「分かりました」

とだけ答えた。


5,6時間目は寝て過ごし、SHRも適当に聞いていた。

ただだけを除いて。


帰ってから、趣味のお菓子作りを始める。今回は、テレビ番組を参考にしてレモンパイを作る。材料は昨日買ってあるし、道具は。

火傷しないように取り出し、写真を撮る。後はただ食べるだけ。

「美味しいけど、もっと甘い方がいいな」

だが、時すでに遅し。もう食べ終わってしまった。

「そういえば、今日見た男子も遅刻したのかな」

ふと考える。ただそこで考えるのをやめてしまった。


窓の外が暗くなり、眠くなる。ちゃんと目覚まし時計を設定していることを確認し、毛布を被る。暗闇の中、音楽を聴きながら眠りについた。


結局、次の日も遅刻して、指導を受けた。

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クッキーとギター ぽぽぽっぽ @poisutechan

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