異世界ほのぼの成長記
おかかカカオ
Day 0 サヨナラは突然に
5月14日土曜日深夜2時16分。
普段なら夢の世界で優雅に過ごしている時間なのだろう。
しかし将来のことを思うと、今しているこの頑張りこそ未来を造り上げる土台であるのだ。
と、僕 木崎風介 15歳は絶賛受験勉強の真っ最中ながら考えていた。
志望している学校へ行くため、その為だけに学習している。無駄なことはせず、ただひたすら机と顔を見合せて、紙に黒く色をつけていくだけの動作を初めてから4時間くらいだろう。
そろそろ紙も体力も限界を迎えてしまいそうだ。
「使ってない新しいノート無かったっけ。無いか。明日の朝にでも買いに行こうっと。」
この一言を言い放ったすぐ後、立ち上がろうとした時、霧がかかるかのように視界がぼやけて意識が飛んだ。そしてこの世界からひとつの魂が、何も入ってない肉の塊が消えてなくなった。
他人の記憶からも抹消され、自分に関連する物のほとんどが目に見えない粒となり宙を舞い、やがて消えてしまった。
「・・・ますか?・・・・・・ん術は・・・」
遠い場所から風1つでなくなるような微かな声が脳に直接聞こえる。
声の主はもう一度繰り返す。
「聞こえますか?召喚術は成功し、あなたは新たな生命を受けるのです。」
訳が分からない。
召喚術とかどこの厨二病だよ。
きっと昔の傷をえぐるような酷い夢に違いない。
そうじゃないと今の自分が感じている、心に棘が刺さっているような痛みに耐えられず死んでしまう気がする。
というより絶対に死ねる。
ふと気づく、身体が軽い。
否、身体がない。
突然声の主は語る。
「あなたは死んだのです。死因は運命による殺害。すなわち、予め決まっていた死ということですね。更に前世でのあなたの情報は無くなりました。死亡というより消滅と言った方が近いでしょう。」
何回死という単語を言うのだろう。
消滅してなお意識のある現状を受け入れることができない。
色々問いたいことはあったが生憎話す口がついていないため諦めた。
もう一度声が聞こえてきた。
「今から自分の容姿、声、職業、初期ステータスポイントの設定をしてもらいます。」
おいおい、ライトノベルの世界みたいじゃないか。懐かしいな、昨年まではずっと読んでたっけ。影響されて厨二に…
おっと、過去に触れてはいけない。
設定した容姿と声は前世のものを使用することができた。
これができなかったら成仏した方が楽だろう。
できるかはわからないけども。
慣れない声の自分は自分ではない気分になって嫌いだ。
職業は20種類の中から選ぶそうだ。剣士や武闘家などの定番のものから鍛冶屋、鑑定士などのNPC以外ではあまり見ないような職業まである。
無難な剣士を選び次に表示されたのは使える武器の種類だ。
片手剣に、短剣二刀流というものもある。
生前、祖父に教わった刀を選択し、剣士が武士に変わると共にボードの内容も変化する。
体力、力、防御、スピード、スキルポイント、幸運値の6つのステータスが現れる。
上4つは元から20ありスキルポイントと幸運値は10で割り振り可能なポイントは20。
体力30
力24
防御21
スピード21
スキルポイント13
幸運値11
ひとまず全ての段階を終え、一息ついた時。
突然視界が暗転した。
そして一瞬にして移り変わった景色は、色鮮やかな世界であった。
"異世界"エレモスト
天に伸びる巨大な塔が遠くにあり、山々が連なっている。
前世と比べて全くといっていいほど空気も自然も何もかもが違う。
新たな世界で1人
剣と魔法が交わるこの土地で1人
───風介の第2の人生の始まりである。
異世界ほのぼの成長記 おかかカカオ @irumina8089
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