俺にだけ聞こえる「声」で門扉(ゲート)攻略

侶子

第一話  受験失敗

高校3年生 速水 真(しん)


東京品川区中央門扉から近い、景色の良い噴水公園のベンチに座り背中を60度近く曲げ、スマホを凝視していた。


「頼む頼む頼む頼む…!」


真は心の中で神に祈りを捧げながら受験結果が表示されるサイトを開いた。




不合格




「………まじかぁ」


これで真は受験した全ての大学の結果が不合格ということになる。

そのため、再び進路を決めなくてはならない。


「どうするかなぁこれから…」


正面にある噴水、その近くで体を寄せ合い甘い空気を出しているカップルの姿を、生気のない目で眺めながら真は呟いた。


ピロンッ

[名古屋二等大門扉、大鹿守連合(スタッグズ)の狩者(ブレイヴ)により攻略]


「ん?」


スマホに届いたニュースは、真の頭から受験結果を忘れさせるのに十分だった。


「二等門扉が攻略っ…!? 昨日まで門扉崩壊(ブレイク)注意警告出てたよな…?」


近くにいた大学生も、犬の散歩をしていた女の人も、真の視線の先のカップルたちも皆、スマホを見つめ驚いている。


「明日から大鹿守連合はテレビに引っ張りだこだろうな…」


真はスマホを強く握りしめながら呟いた。


「狩者(ブレイヴ)か…」








今から40年前、世界の理が崩壊した。


世界各地で大きな「門」が出現し、中から異形の生物が大量に溢れ出した。


「門」から現れた生物は地球の生物より遥かに強力であり、現代兵器はその意味を為さなかった。そのため多くの人々が犠牲になり、多くの都市が行政機能を失った。


これが「一次異門扉崩壊 −ファーストブレイク−」である。


現代兵器は異形生物 (モンスター) に無意味であったため、人々は失望に陥ったが、刀や剣のような人の手によって作られた鋭器は、異形生物の体に傷を加えることが可能であった。


ゆえに人々は、剣や斧を持って異形生物に立ち向かった。


そして生まれたのが 「狩者 (ブレイヴ)」 である。


狩者達は人の身でありながら、非人間的な能力を持つ特別な人間であり、地上に溢れた異形生物との戦いを終結させた。


しかし、「門」は絶え間なく出現し、それまでの平穏は失われ、人々は常に恐怖を感じていた。


狩者は「門」の中に入ると現代の理から外れ、「レベル」という概念を持つようになる。「レベル」を上げると身体における全ての能力が向上する。


力を持たない一般人は、狩者を讃えるようになり、狩者は現代において権力を持つようになった。



そして現在、各都市は狩者の連合体が政治の実権を握っており、狩者は人々の憧れの存在となっていた。





これは真が多くの門を攻略し、狩者の頂点を目指す物語である。





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