蒼の拳銃

黛 美影

第1話 異動命令

 国家公安委員長、すなわち警察組織のトップ。政治家の中でも将来を約束されたエリート中のエリートが任命される職業である。そんな国家公安委員長から警視庁への移動命令が届いたのが3月の頭のことである。

「今日が最後の日だな」

「桜木先輩、お世話になりました」

「まだ、今日の業務があるだろ。まぁ、今日は早めに終わるつもりだから、さっさと行くぞ」

「はい」

 僕はTシャツから素早く、警察の制服に着替えて先輩が運転席にのるパトカーに乗り込んだ。交番勤務最後の日、だからといって交通課に大きな事件が起こるわけでもなく、軽い接触事故を2件程度処理して、今日の業務は終わることになった。

「それにしても、こんな所から警視庁に移籍するとはな。しかも、高卒で」

「本当に、なんで僕なんかが警視庁に異動命令がでたんでしょうね」

「まぁ、警察も人手不足だからな。警視庁か...。気をつけろよ。蹴落とされないようにな」

 桜木先輩は恰幅が良い。体重は僕の倍くらいある。破裂しそうな制服のまま、桜木先輩は僕を送り出した。僕は今日は警視庁への異動に向けて、準備する事となっている。もう、準備は終わっているのだけど。

 僕は家に帰って、赤紙のような異動命令と書かれた書類に目を通す。そして、そのきな臭い手紙をバックに詰めておく。

「考えたって仕方ない。眠ろう」

と独り身なのに呟いた。神奈川県に住む僕が警視庁に行くには早起きする必要がある。だから、何故異動命令が出たのか考えるのを辞めて眠りについた。


 朝早くに目覚め、買ったパンの袋を開け、そのまま口に運ぶ。食事を終わらせたら、歯を磨き、スーツに着替え、寝ぼけたまま、電車にのる。

 警視庁に着いてからも、眠気は消えなかった。手紙で、指定された部屋に向かう。向かう部屋は国家公安委員長総務室である。

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