彼女がいたあの時の思い出

仁志隆生

2002年 8月

 2002年8月。

 暑かったかどうか覚えてない。

 仕事で遅くなり、終電で帰ってきた時の事だった。

 

 テーブルについてさてごはん食べようかと思ったら、「彼女」がゆっくりとそこに来て、じっと僕を見た。


 彼女は数ヶ月前から徐々に弱りだして、歩くのも辛そうなくらいだった。

 この数日は殆ど寝ていたのに、少し調子が戻ったかなと思っていると、


 彼女が僕に飛びついてきた。

 

 元気な時でもそんな事は滅多にしないというか、その数年前に長期出張から帰ってきた時くらいだったかな。

 あの時はおかえりなさいだったのだろうけど……。


 ああ、もうそうなんだな……。




 その二日後、彼女は息を引き取った。

 悲しさもあったが、それよりぽっかり穴が空いたかのような気持ちだった。

 


 後になって家に来てくれてからの十八年の思い出が蘇ったりする事もある。

 夢に出てきてくれたこともあった。


 彼女と最初に会ってから今年で四十年。

 今回の公式自主企画を見て、これはちょうどいい機会かもと思いました。




 では皆様、僕と彼女、我が家で最初の猫との思い出話に少々お付き合いください。

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