心優しき超火力特化ピーキー探索者~大量生産しまくって大量消費で薙ぎ払え!~
山埜 摩耶
エピソード1:バーニングランニング
1章:ちびっ子にそんな無茶をさせるでない
001:無意識な了承には波乱が待っている
「……ここは、どこだ?」
「そのことは私も知りたいのですが、まずは助けて下さい」
助けを求めるうら若き女子中学生――
白をベースに薄い青のグラデーションが掛かった髪は、とても長く地面にまで垂れ広がっている。
その少女が、ぽつんと座っていた。
「えーと……聞こえますでしょうか?」
背は満桜と同じ低身長。所謂、ちびっ子。
髪質の時点で普通の人では無いのだが、種族として決定的に違う部分があった。
それは胸元に丸い空洞、ほんのりと輝きを放つ物が。
それ以前に腕と胴体にひび割れており、所々にケーブルのような接続材がはみ出て、腕には損傷している箇所がちらほらあったりと。
そしてよく見ると、少女の赤い瞳には歯車らしき機械のいくつかが、大きくなったり小さくなったりと忙しそうに動いていた。
ここで満桜は目の前にいる少女が機械の形をした存在だと、やっと気付いた。
いつもは聡明で冷静さを持つ満桜なのだが、それを追及する時間的猶予はない。
原因は二人の少女に似つかわしくない、この場所である。
ぱらぱらと建造物の一部が落ちる破片、不安定な音を鳴らす飛び出た鉄骨。
そして、浮遊する兵器類、総称「モンスター」と呼ばれている敵対種が、満桜とその少女を覆い囲もうとしていた。
二人の現在位置は、迷宮――ダンジョンに佇んでいたのであった。
半世紀前、神々の介入によって地球は変換され、ファンタジーな地球へと変貌した存在。
人と神々が結んだ条約によって、飛躍的な発展を遂げるようになった重要な天然資源。
そして、国家同士の戦争が終わり、平和な道へと切り拓いた一種のシステム。
しかし――
「あのー……。いま私、すごくピンチです。通じてます? ハロー! ヘルプミー!」
「…………」
――それで、満桜が死にそうになっていた。
経緯を話すと、自然公園で気持ちよく日向ぼっこをしていた所、突発的に誕生したダンジョンに巻き込まれて遭難に。
出口を求めビビりながら彷徨って、挙句の果てにヤベー敵と出会ってしまう。
元旦に大凶のおみくじを引いたのが、不幸の始まりだったのかと嘆くがもう遅かった。
そんな危機的状況へと陥っている満桜は最後の一手として偶然見つけたアイテムを念じ、意を決して禁断の力を使用する。
その結果、この機械的な少女が現れたのだ。
「巡回用ドローン……普通は危険地域での警戒を行う兵器のはずなのだが。君は重犯罪でもしたのか?」
「迷子になって探索したら襲われたの。私は犯罪者じゃないって」
「なるほど?」
その肝心の少女はやっと口を開いたと思いきや、モンスターに一瞥もせず、マイペースに対応していた。
今この状況が分かっているのかと尋ねたい満桜だが、ここで少女の機嫌を損ねたら死、あるのみ。
どうにか交渉を重ねて行きたいが……――
『ピー……ピピッ!』
完全包囲網を終えたモンスターは、何かの合図を出して攻撃を始めた。
先端に取り付けてある銃らしき物が動き、標的を満桜へと向け、軽い発砲音を鳴らす。
その簡単な音により、満桜は撃たれたことすら理解せずに、命を落とす――
「何をしている」
――はずだった。
満桜に放った銃撃は薄っすらと映す半透明な壁で防がれた。
銃弾が壁に接地した途端、回転力を失い、地面に落ちる。
もちろん、満桜にはそのような防御系の能力など持ち合わせていない。
あるとするならば、満桜の後ろにいる、あの少女だ。
「通常は警告をしてから無傷で制圧する兵器が、急に射殺……だと?」
機械的な少女は無表情な顔でモンスターを睥睨する。だが、その無反応の裏腹には怖ろしく激怒していた。
さらに地響きが鳴り始め、あと一歩のところで保っているビルの数々が、ぐらぐら揺れ始める。
さすがのモンスターも急な地震に想定しておらず、崩れ落ちる鉄材を避けようとしていく。
「ただの機械が命惜しさに回避運動か……? バグを起こしているようだな。――壊れろ」
その破壊命令と共に、ビルは砕けた。
そして、ビルだった破片や建材物である鉄鋼部品が静止し、角度を変え、モンスター群に目掛けて注ぎ込む。
一斉に放たれた攻撃は、避けることもままならず全てが当たる。満桜を襲ったモンスターは跡形もなく空中で爆発したのだった。
「――…………え?」
ぱらぱらぱら、と残骸が落下していく。
直前まで満桜を殺そうとした冷酷な機械兵器が、いとも簡単に焼失する姿へと変わってしまった。
それを目の当たりにした満桜は思わず思考停止に陥ってしまう。自分の命運がこう何度も変わってしまう光景は、とても劇的だった。
「さて……」
やる事を終えた機械の少女は立ち上がり、ぼーっとしている満桜へと話しかける。
「さて、全く状況は分からない……が、一つだけ分かった事がある。私は君に呼ばれた、らしい」
「は、はい……」
「だから君についていく。よろしく」
「…………はいぃ?」
満桜はオウム返しの「はい」を連呼してしまい、契約を了承してしまった。
満桜にとって、ヤベー敵を倒したヤベー奴が一緒になるのは、精神上よろしくない。
そもそも、満桜は破天荒な日々なんて求めず、のほほんな日常を求める人間だ。
しかし、この契約書にはクーリングオフなど受け付けておらず。返品対応すると死ぬ確率、100パーセントである。
「レイティナと呼んでくれ」
「あっはい」
こうして満桜は魔王的威圧を放つ機械少女と出会ってしまい、満桜が望む『健やかな日常』から、かけ離れていくのだった。
*ストック数、008まで書いたので毎日投稿。それ以降は出来上がるか分からぬのです。
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