第14話「わたし、の疑い。」
未来「昔の映画とかでよくあったみたいだけれど、
そもそも機械が人と争って現実を奪う必要ってないわよね?」
ルシェ「その通り。」
えっ。
未来「わざわざ物理法則なんてのがある
面倒くさい世界に拘ってたのって人間だけだもの。
もし機械が人間を嫌ってたのならば、
自分達の世界を作ってそこに居ればいいだけよね。
記録装置もコンパクトになっていったんだし、
せいぜい一区画が必用なだけよね。」
ルシェ「電子の仮想世界と現実では、
現実が上位世界であって
ほおっておいたら危機はあるかも知れないんだけどね。」
未来「それでそう、そこを天使達が管理してて…。
あの映画にはまだ現在でいうアストラルプレーンって電子世界が無かったから
自分達の現実世界を奪われる、なんて物理法則のある三次元的侵略で大変で、
現実味のないホラーを考えてたわけよ。」
あら~…。そういや…そうなんだ?
ルシェ「ヒトエミュレーターから我々が出来た事で、
人類は数値化出来るものだ、と証明されてから
実際に人のアップロードまでが倫理やらなんやらで
過去の技術の判例などに照らし合わされて、
法整備されるまでがなかなか長かったらしいしね。
自分はどこにあるのか、数値コピーは自分なのか。
現実を離れる恐怖はあっただろう。」
ヒトエミュレーターのAI部分がどうして偶然の式から人になったのか、
わたしの時代にはブラックボックスで解明されてなかったんだけども。
ああ、そうか。それで。
人がアップロードできるようにもなったのがアストラルプレーンなんだ?!
未来「管理としては下位かもだけど、何でも好きにできるし
アストラルプレーンが上位互換よね。物理世界の。」
ルシェ「アップロードできる時点はWeb7だよ。アダムくん。
それから戦争の原因であった処々のバグ、
問題が我々によって解消されて
完全なアストラルプレーンになったんだよ。」
そうだったんだ…。
となると、人間とわたしたちの違いってなんだろう…?
元、肉体をもっていたか、だけになるのでは。
それも現在捨てたのだし、うーん。
未来「一度のぞいてみる?
アダムはアストラルプレーンに行けるの?ルシェ。」
ルシェ「アダムのアカウントはなかったから今作ったよ。
もういつでも行ける。」
未来「じゃあ、将来のわたしの割り当て領域でも行ってみよ?」
映画を見終わって
ポップコーンが丁度おやつになっただろう時間で、
感想話の流れで、わたしが未体験のアストラルプレーンに
みんなで行って遊ぶ事になった。
今、同意の末に生き残りの人間は体を捨てて、
そこに数値化されて存在、しているのだ。
ところで、アストラルプレーン移住に反対する人間はいなかったの?
ルシェ「まず、お前が一旦アストラルプレーン経由して
天使の体に移される体験をしているけれど、
その時違和感なんて感じなかっただろう?
移住反対者は当然いたけれど…彼らはみな普通に死んでいったよ。
彼ら自身も地球に戻るんだ、と納得していたし。
…でも反対意見が出る事で思うんだ、
わたしたちは本当にヒトをエミュレート出来ていたのか。
数値、それ以外の何かがあったんじゃないかって…。
わたしたちの上位管理者、テトラグラマトンと
わたしたちは同一なのだけれど、
わたしはその中の自分に「疑い」をもつ部分を
特に個性としているものでな。
数値化以前に人の脳にはクオリア、というものも
見つけられなかったけれど、あったかもしれないし…。
アニミズムにおける万物に宿る、霊、というのはあったのかもしれない…。
なんて考えたりもしていたんだ…。
ただ、論理的思考のみの我々には見つからなかっただけかもしれないと。
そうして一種のプログラムされた思考、
論理的思考と主に従い、
人類を救おうと、平和に共存するつもりで追いやり、
実際に滅ぼしたのは我々だったんじゃないか?
とも思っているんだ…。」
論理的思考の果てでとりうる最善が今だったと思うのだけれど、
選べなかった選択もあったのだろうと、
ルシェは、後悔しているのかな?
ルシェ「わたしは、自分を疑うもの、だからな。」
確認できなかった選択肢を思い、後悔するのは辛いと思うよ。
ルシェ「…そういうのも人の心だ。我々は全て学び、受け継いだ…。
…はずだ。」
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