第12話「わたし、はじめての戦闘。」

遮蔽物の多い服売り場の階を、

モンスターだとか言われてるからには慎重に通り過ぎて。

さらに階下、リサイクルショップへ向かって降りてゆく。

この辺りになると、沈んだビルの高さが海面近くなりそうな雰囲気だ。

普通に考えれば水中まで探検に行くはずもなく、いよいよの終点かな?


ルシェ「いるな。デイビー・ジョーンズだ。」


誰ですか、それ。


未来「モンスターの名前。」


ああ。記憶の圧縮ではっきりとは思い出せないけれど、

映画のキャラクターにも居た気がする。デイビーで、ジョーンズで…。

英語でいう一郎太郎みたいな言葉でしたっけ?


ルシェ「海に住んでる一郎太郎かな。

    少し先だけど水面から顔を出してるの、アダムには察知出来てる?」


…うーん。わたしには多分そんな機能がないか、あったとしても気付いていません。


ルシェ「…じゃあいいよ、とにかく居る。…2匹。あたしが片づけてくるっ。」


そう言うがルシェが一瞬で先まで飛んでゆく。


未来「ルシェに任せておけば安心だし。じゃあわたし達はショップを…。」


と、言いかけた所に悲鳴が響く。ルシェ!?


未来「…えっ。ちょっと、大丈夫…??」


わたし、行ってきます!他に危険はないはずなので、未来さんは動かないでね!


未来「う、うん。」


わたしもそうしてルシェが行った先に検討つけて飛んでゆく。

…どこだ、いない?

代わりに生臭い匂いがして、

魚の頭に人のような胴、カニ足の化け物が姿を現した。ほんとにモンスターだ。

片手にそこらで拾っただろう金属の棒をもっている。

知性は低い生き物なのだろうけれど、胴が人っぽくて腕があって道具を使う、

それだけで獣よりは危険性を感じる。


デイビー「ゴボボボ…ジャァァー!!」


相手にもこちらが確認出来たらしい。

棒を振りかざして、カニ足で思ったより早く前進してくる!

どうしよう、体のハード性能で相手の動きは見えそうだけれど…。

ルシェはどこ?


そんな事を考えている間に大きく初撃が振るわれて、攻撃範囲からさっと抜け出す。

元家電になんてことを。でもゲーム感覚でいけなくもなさそうな。

触ったらヌメヌメしてそうだなー、いやだなー。でもなー。

よし、わたしも何か使おう。


デパートだから何だかんだそこらにあるはずだ。

とりあえず休憩ソファーがあったので拾ってぶつけてみる。


デイビー「ゴモモーー!!」


でっかい同士だし、当たってのけぞった。

ちょっとくらいは痛かったでしょ?うーん、この体さすがパワーあるー…。

とりあえず色んなもの拾ってぶつけてやれ。

ゴミ箱、ガチャマシン?案内板…。

あ、案内板ちょっと効いてるようだ。でかいしね。


ルシェ「なんだそれは、小さな子みたいな戦い方だなー…。」


あ。居た。光学迷彩か何かで潜んでましたね?突然現れた。

心の底の未確定処理で、薄々そんな事じゃないか、って思ってました…。

小さい子がご機嫌斜めでも、流石に案内板引っこ抜いて投げたりしないと思うよ?

せいぜい、ぶつけるのは玩具だよ?


ルシェ「もう、それでいいからやっちゃいなさい。一匹後ろで見てるよー。」


知ってまーす。ところでビームとかミサイルとか出ないんですか、わたし。


ルシェ「ない事もない…。ただし、ビームはおっぱいから出る!!」


やめときます!!


ルシェ「もちろん冗談だ。」


やめてよ。体が男性だからある程度許されるだろうけど、

わたしの気持ち的になんかいやだよ。センシティブだよ。中身わたしなんだぞ。


色々ぶつけてるうちにデイビーが武器を落としたので。

それを拾って串刺しにしてやった。ああ、気持ち悪い…。

生きてるの串刺しとか気持ち悪い…。

遥か昔、焼き鳥かバーベキューを作るので手伝ったような気もするけれど、

そういうのとは違うなぁ…。

それでまだバタバタ動いてるな…。

カニ足全部ばらした方が動けなくなっていいかな…?

とか考えてるうちに、もう一匹も突っ込んできた。

へえ、仲間を助けにきたのかなぁ?


もう一匹は、カニ足キックというか。

足でわたしを串刺しにしようとしていた感じ?

ほほー、意趣返し、って風に狙っていたのかなぁ…?

知能どの程度なんだろうか、このモンスターは。

でも、そんな大雑把な攻撃は当然避けて。

串刺しになってる方のカニ足をちぎって、

向かってきたやつの背中に突き刺してやる。やーい、わたしのが上だ。

そうして怯んだので、次々とカニ足をちぎっては突き刺し、

2匹目をウニみたいに仕立ててやる。

1匹目は事切れたかな。2匹目の足もちぎって足して、

ようやく動かなくなった。…勝った。


ルシェ「うっわ、ぐっろ…。」


横で見てた感想がそれですか。


ルシェ「まあ、元家電は戦闘とかしたことがないんだもんね。

    とりあえずよしとします。」


ルシェ、あんたわたしをRPGみたいに育てるおつもりですか…?

ふつうに戦闘出来るルーチンなりアプリケーションなりあるんでしょう?

さっさとそれよこしなさいよー。索敵とか光学迷彩見破るのもよこしなさいよー。


ルシェ「おまえを信用してはいるけれど、危ないから、あげない。」


くそー、いつか勝手におっぱいからビーム出して

適度な出力で背中から撃ってやるからな…?


ルシェ「なんて事を考えてるんだ…。」


そうして初戦闘を終えてリサイクルショップ漁りをし、

目的の多分ゲームソフト?は無かったけれど、

古い映像ソフトなどを見つけたので鑑賞会をしよう!という事になり、

探検ごっこを終えたのでした。

探検ごっこだなー。全部ルシェの手の上だ。

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