第7話「ショベルカーとわたし。」

ユンちゃんはキャタピラ少女だし、すぐに見つかった。

片手が大きなショベルで全体に黄色くて、夜でも割と目立つ。

ライトはあるようだけれど付けてはいない。

下級と言えども天使なので、そう目は悪くないのだろう。

イブや人がいる時にでも付けているのかな…?


近づいてみると、

もう片方の人の手でちまちま雑草を抜いている。

が、どうがんばっても届かない背の低い雑草は抜けなくて。

そう、徹底した作業でもない感じ。

ほどほど抜いて次に向かおうと振り向いてわたしに気づいた。


ユン「あっ…。」


こんばんは。


ユン「こんばんは…。おに… …おにいちゃんじゃ、ないんですよね?」


うん、元居たぴょんぴちさんじゃない、ですよ。


ユン「やっぱりそうですか…。はぁ…。」


あ、でもね。ぴょんぴちさんは別の所にいるって。


ユン「! そうだったんですか!良かった、おにいちゃん…!」


この体、元はユンちゃんのおにいちゃんだったんですか?


ユン「はい、一緒にこの島の防衛をしてました!

   変なのが来たらおにいちゃんが迎撃をして、

   ユンが島の掃除なんかの役割で!島のお掃除兄妹だったんです!」


おにいちゃん、防衛だったんですか。

…なるほど、下級天使って割によく動くこの体は戦闘特化とかかな?

それでウリが警戒もしてたのかなー…?!

…なんか思ったらわたし、ビームとかミサイルとか撃ち出すんだろうか。


ユン「多分そうです。おにいちゃん戦ってるとこって見た事がないですけど。」


…そうなんだ。よくわかんない。


ユン「だいたい一緒に草むしりしてましたー…。

   大きな雑草はユンで、小さな雑草はおにいちゃん。

   ずっとお話しながらやってたのに…。」


そうだったんだ…。ごめんね、わたしがお兄ちゃんの体とっちゃって。


ユン「いえ、仕方なかったんだと思います…。

   全てご主人様のためだったんでしょうし…。」


そういえばここって随分広いけれど、人間はあの子だけなの?


ユン「はい、ユンが聞いてる限りはそうです。

   ご主人様の未来さんが地上最後の人間のはずですね。」


… … …えっ。

じゃあ人類って、ほぼ…絶滅してたんじゃない…。

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