第2話

時計を見る。時刻は深夜2時。

『ついにその時が来た。』

健斗は荷物を背負って家を出る。健斗の家の周りには街頭が少なく、外は真っ暗だったので、空に輝く無数の星が目についた。その輝きが、健斗には眩しかった。

最後に星を純粋に綺麗だと思ったのはいつだっただろうか。『空を見上げて足元を掬われるよりも、今進むべき道から目を逸らさない。』これが、健斗の信念だ。

暗がりの中、健斗は足元に注意しながら進んでいった。

目的地に向かう途中で、行きつけの喫茶店が目に入った。微かな珈琲の香りが、ついさっきまで店が営業をしていたことを彷彿とさせる。

健斗は胸を撫で下ろした。

『マスターと鉢合わせしなくてよかったな。』

今夜のことは、マスターには知られてはいけない。

いつも健斗を気にかけてくれるマスターは、健斗にとって唯一、心を許せる存在だった。だから、マスターに隠し事をするということは健斗にとって心苦しかった。

罪悪感を胸に、健斗は喫茶店を足早に通り過ぎた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る