続 村の少年探偵 その13 ヤングケアラー

山谷麻也

第1話 天才ハンター

 田舎の生活はまったりしていた。村の衆は少々のことでは腹は立てなかった。

 それでも、例外はあった。蜘蛛くもの巣だけは、シャクにさわった。朝一番に道を通ったりすると、体にベチャとくっついた。中には強力な粘着質のものもあって、がすのにひと苦労した。


 別に蜘蛛が人間の領域を侵犯したわけではない。逆である。

 蜘蛛はせっせと糸を張る。空中ブランコよろしく、要所要所に糸を結んでいく。外枠ができれば、中心に向けて糸を張っていく。


 後は獲物が通り掛かるのを待つだけである。アブやハエ、蚊、蛾、蝶などが掛かると、急いで腹から糸を繰り出して、ぐるぐる巻きにする。芸術的なテクニックである。蜘蛛もまた、天才ハンターと言わざるを得ない。


 田舎の子供たちは蜘蛛の巣で遊んだ。

 細い木の枝を輪っかにして、蜘蛛の糸を集める。ちょうど、金魚すくいのポイを大きくしたようなものだ。これで、虫を捕まえた。

 お株を奪われた蜘蛛の心中は、どうだったか。子供たちには、そこまで思いやる余裕などなかった。

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