アスファルトの切れた道
佐々井 サイジ
第1話
昔、小学生の頃、いつも遊ぶ五人の友達がいたんだよ。で、だいたいその中の一人の家に遊びに行くんだけど、ある時、誰の家も行き尽くして飽きちゃったからどうしようってなってさ、そしたら一人が「黒山行こうぜ!」って言いだしたんだよ。俺の住んでたところってまあ近くに大きめのスーパーとかコンビニとかファストフード店とか、田舎のわりには栄えてた方なんだけど、ちょっと自転車を走らせるともう田んぼ、畑だらけなのよ。
で、黒山っていうのは俺らが住んでた地域にある小さい山で、一応、舗装されてる道もあったけど目立って遊ぶものないし、まあその頃はゲームの方が楽しかったから遊び場の候補にも挙がってなかったのよ。
でもゲームもやりつくして飽きてきた頃だったし、みんな普段行かない山が急に面白く思えてきたのか満場一致で可決されて本当に行くことになったんだよ。
黒山ってのはさ、名前通りで、なんか黒いのよ。真夏でギンギンに眩しい太陽が真上にある日中でさえ、黒山だけなんか薄暗いんだよ。濃い色の葉が木が多いのか、位置的に太陽の光が当たりにくいのかわかんないんだけど。不気味だったよ。
でも五人なら怖くないよなってなったんだろうな。実際そうでさ、山のふもとに自転車停めたときも大して怖くなかったもん。山に入る最初の道はさ、車が二台すれ違えるくらい幅広いアスファルトの坂があるんだよ。その坂が急で自転車じゃちょっときついんだ。だから自転車を置いて歩いて行ったんだよ。
坂を上るとさ、徐々に木々の葉が何重にも折り重なって太陽の光が差し込まなくなった。その日は晴れだったよ。しかも真夏だし。セミの鳴き声はそこら中から聞こえてきてうるさかったのが救いだった。薄暗い不気味さを紛らわしてくれたからな。
アスファルトの道を折り返しながら上っていくと、突き当りに公園があったのよ。ただ公園に行く道の左側にもう一つの道が立入禁止のバリケードが置いてあったんだよ。そのバリケードの先のアスファルトが、ぶつりと切れててそこから地面が土や葉っぱがむき出しになった道なき道みたいになってたわけ。
公園って言ったってさ、滑り台、うんてい、ブランコ、鉄棒みたいなのしかなくて目を引き物が無いのよ。大して広くもなかったし。しかも小学生の男五人が集まると、ちょっと悪さしたがる年頃じゃん。
「ここ、行ってみね?」って垂井っていうヤツが言い出したのよ。みんな、ニタニタしながらそれぞれの顔見合ってたよ。俺は絶対嫌だったけどね。みんなもそうだったと思うよ。でもビビりって思われたくないから強がってただけだと思うけど。
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