おむすびころりん

Grisly

おむすびころりん

「いやぁ、こんなにもてなしてもらって

 ありがとう。」


「いえいえ。

 美味しいおむすびのお礼ですよ。

 またいつでも遊びに来て下さいね。」



優しいお爺さんと、地下のネズミ達。

異世界との素晴らしい交流の時間。




その後だった。

地下のネズミ王国。


若い衆が、人間をもてなし、

お土産まで持たせて帰った事は、

更に地下で暮らす長老達の耳にも入る。


若い者達と違い、

彼等は歴史を知っている。

たちまち大問題となった。


「大昔、地上の迫害を逃れ、

 ようやく地下に移り住んだのが、

 我々の祖先。


 知らずにした事は仕方ないが、

 その存在を知られ、

 証拠のお土産まで渡したとあっては…



 彼に罪はない。

 しかし、噂が広まっては我々の

 安全に関わる。


 直ちに暗殺部隊を組織し、

 その一家丸ごと口封じをせねば。」


たちまち、

非常事態を告げるサイレンが鳴り響き、

ネズミ達の精鋭部隊が作戦遂行のため、

準備を整える。




しかし、彼等が仕事をする必要はなかった。

皆さんもご存知のことだろう。

隣のお爺さん。


都合良く、まさに奇跡というタイミングで

身代わりがやって来たのだ。


地下の暗い環境。

また、普段接触しない顔は

非常に覚えにくい。


優しいお爺さんは、命を取り留めたのだ。

一生地上に出られなくなった隣のお爺さんは

気の毒なことだが…




もっとも、気の毒なのは彼だけではない。


長老達が心配した通り、

優しいお爺さんの話は、

当然、多くの人の知る所となり、


心無い入植者達によって、

ネズミの地下帝国もまた滅亡を迎えるのだ。






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