転生したお姫様で魔法使いで戦士だったワタシの話
担倉 刻
小学生編
あなたには「黒歴史」があるだろうか。
どなた様にも若いときにひとつやふたつは闇に葬り去りたい過去があったかもしれないが、わたしにも人並みにそんな過去がある。
齢四十も過ぎて、旦那にすら話したことのない黒歴史、いま紐解いてみよう。
なおこれを執筆するには大変な時間を要した。ちょっと書くたびに「うわあ……コレ、うわあ……」と頭を抱えてしまったからだ。
その昔、漫画とかアニメがとてもとても大好きだった担倉少女は、ある日何を思ったか――きっかけは覚えていない。ガチで自然発生したものだった――、
自分は異次元世界のお姫様(白魔女)の生まれ変わりで、
ある時自分に仕えていた妖精がこちらの世界にやってくる。
妖精から魔法を授けられた自分は
前世で敵対していたもう一人のお姫様(黒魔女)
――しかもこの悪いお姫様は前世で自分を殺した張本人――と
戦うことになってしまう。
という、いろんな……本当にいろんなアニメとか漫画とか様々なものから拾い上げてきた設定をハイブリッドに組み上げたストーリーを脳内で瞬く間に作り上げた。
十二歳。
小学六年生の秋のことだった。
担倉少女、それからはすっかり【戦う魔法少女】として生活を送っていった。
妖精から連絡が入ると戦いに向かわなくてはいけないのだけど、授業中に飛び出していくほどの勇気はないヘタレだったので、連絡が入るのはいつも放課後と相場が決まっていた。
放課後、そんなものはない連絡をもらって体育館の裏に走りこむと
「開け! 次元の扉!」
という全くオリジナリティもセンスもないかけ声で戦いが始まる。
ちなみに敵も妖精も次元の扉も一般人には見えず、自分だけに見える仕様という大変都合のいい設定だった。
放課後になると慌てて教室から消えていく担倉少女を面白がらない人間がいないわけがない。ましてや好奇心の塊の小学生男子が。
クラスメイトからはあとをつけられ、かけ声を聞かれ、しばらくいじられることとなったが、すっかり【戦う魔法少女】な気分の自分は
自分が世界を救ってるんだ、関係あるかっ
そう思いながら毎日駆け出していた。そもそも世界を救うなんてそんなデカい設定はなかったはずだが。
やがて戦っているうちに設定がどんどん膨らんでいく。
最初は名前のなかったお姫様側にも敵側にも名前がついていったり、
自分は自分で新たに風を操る魔法を覚えたり(覚えていない)していった。
そんな担倉少女も小学校卒業のときを迎える。
中学生になれば多少は落ち着くんじゃねえの、オチはどうしたオチは、とちょっとでも思ったそこのあなた、甘い。熊本名物陣太鼓くらい甘い(担倉は熊本在住ではない)。
厨二病という言葉があるように、この妄想と戦いは中学校に入っても続くのである。
次回、中学生編。
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