第7話 地上の世界
「これで、最後の階層か」
俺はダンジョンの心臓に手を当てながら今までの苦労を思い出す。
最初は小屋での幽閉生活、次に魔法と武闘の訓練、そして最後にダンジョン育成である。
階層を一つ重ねるごとで作り出すのに必要な魔力量が増幅していくというのは、深さゆえにかなり重荷となっていた。
そのため、俺の持ってる魔力量も増やす必要があった。そしてこれが何よりキツかった。
気を失うまで魔力を使う、ていう単純かつ効率的な方法を取ったからである。
その苦しみといえばいやもうね、もう本当思い出したくもない。
「「おめでとうございます、グリフ様」」
「ありがとう。これもルースとフォブニルが居てくれたお陰だぜ」
とうとう目の前の透明な球体に黒い光が充満し、眩く部屋を照らし始める。
そして光が収まった後、俺はゆっくりと目を開き、後ろに控えている仲間にこう告げる。
「地上へ出るぞ」
♢
「なりません、グリフ様。お一人で行かれるなどこの私が許しませんよ?」
「いや、だってさ。あんまり大所帯で行ったら流石に目立ちそうじゃない?」
今、俺は一人で地上に向かうと言った事でルースとファブニルを含む仲間達に止められている最中である。
「グリフ様を一人で送り出し、もしあなた様に何かありましたら私達は……」
「分かった、分かったよ。て言ってもさ、流石に全員は連れていけないって。目立つし」
それに大半の見た目が魔物そのものだ。そんな状況で人間の国家なんて入れるわけがないしな。
「最悪でも連れていけるのは人間の姿になれる奴だけだな」
そういってずらりと目の前に並ぶ仲間たちを見下ろす。ここに居る魔物達は全てダンジョンの主と呼ばれる奴等ばかりだ。
1000階層あるダンジョンの内、百人しかいない。そしてその誰もが人間のような背格好をしているわけだが、やはり見た目に少し魔物感が残っている。
強いて許せるのはファブニルとルース、それに1000階層目の主であるドウジを含む数人の主くらいか? それぐらいだったら獣人で押し通せる気がしないこともない。
「では私とルースが共に参りましょう」
「仕方ないな。じゃあそれで」
外へ出るメンバーがファブニルとルースに決まったところで俺はいよいよ待望の地上への第一歩を目指すべく、ダンジョンの心臓の下へ行く。
ダンジョン内部であればここから自由に転移することが出来るのである。また、ダンジョンの主達に渡す転移の魔道具もこの場所に飛んでくる。
「行くぞ」
「「はい!」」
そんな言葉と共に俺達の姿は白い光に包まれていく。そうして次に俺達の目の前に現れたのは地上の光が差し込むダンジョンの入り口であった。
居ても立っても居られない。勢いよく駆け出し、入り口を通り抜けると、そこには澄み渡った青空が広がっていた。
「おお、久しぶりの世界だ」
幽閉されてからというもの俺は一度も青空を拝んでいない。当時十歳くらいだったっけな? てか俺はいま何歳なんだ?
どれだけ年数が経過したかなんて全然覚えてねえや。
「さ~て、早速ルケーノ帝国に戻りたいところだが、ここがどこかも分からないしまずは村でも探すか」
「少々お待ちを」
そう言うとルースはスッと目を閉じる。少しして目を開くとこう告げる。
「ここから南方向に幾人かの魔力の動きを感じます。恐らく旅人でしょうが」
魔法で周囲の魔力を感じ取り、どんな者が居るのかを確認したのである。探知魔法と呼ばれるこの魔法は余程魔力操作に長けていないと出来ないものだ。
俺達のダンジョンの中じゃルースがダントツでこの魔法を扱うのが上手い。
「でかした、ルース。早速そいつらに聞いてみるか」
そうして俺達はルースの言う方向へと向かうのであった。
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