A子のこと
A子は場末のオナクラ嬢だ。わたしの友人でもある。事情があって入院していたが、自宅安静を条件にのこのこ退院してきた。天涯孤独の彼女は嬉々としてわたしを自宅に呼び寄せ、そしてたまたまそこにありましたみたいな調子で帯付きの現金を投げて寄こし「頼むよ」と言った。へらっとした顔をぶん殴りてえなと思ったが、カリカリの身体と白い肌に浮く青い血管を見て、こいつと会うのは五年ぶりだと気が付いた。わたしは会わないあいだ、一度もA子のことを思い出さなかった。
そんなこんなで来月27日までわたしは仕事を休んでA子の部屋に居候することになった。この期間はA子のカードが使い放題だから、家政婦のバイトと言えるかもしれない。とはいっても料理の出来ないわたしがここにいてもUberを頼んでやることしか出来ず、せいぜい洗濯と掃除くらいしかしてやれない。A子もそれはわかってる。要は、ただの暇つぶしの相手なのだ。
A子は昔から面白い。自称「明るいブス」で超が付くほど人生がへたくそだ。金しかないくせに毎日楽しそうなA子を見ていると全てがばかばかしく、わたしもこのままキャバ辞めようかな、なんて考えたりもしてしまう。とりあえずは一ヶ月も休職するのだ。せっかく女と暮らすのだから百合でも書いてみようかと思ったけれど、妄想を働かせるにはA子は痩せすぎている。
お水のイツキと申します。 水野いつき @projectamy
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