保健室ダイビング

保健室は私の避難所だ。



どうしようもなくしんどくなった時、切りたくなった時、なんとなく同級生がたくさんいる空間にいたくない時。割と定期的に助けを求めに保健室へ行く。


保健室を頼るようになったのは、高校に入ってからだった。

拗れる友人関係、いやでも耳に入ってくる悪口。担任のプレッシャー。

疲れ果てた私は、仮病を使って保健室へ飛び込んだ。


保健室の布団は、いつもいい匂いがする。

柔らかくて優しいシャボンの匂いがする。

幸いにも保健室の先生は優しい人ばかりで、話もたくさん聞いてくれて、理解してくれた。

やはり、頼るべきは生身の大人なのである。



『耳栓つけてみたら?』と提案してくれたのも保健室の先生だった。

誰かが怒られてたり、大きい声で喋っててストレスだと感じたら耳栓を付ける。

それが許されるのだと、初めて知った。


逃げて、いいらしい。

たくさんたくさん逃げていいらしい。

自分で対策して、頑張ってもダメだったら、逃げていいらしい。



耳栓をはめて、髪をおろして、軽く手で耳を覆えば3割は聞こえなくなる。

少しだけ静かになって、ほんの少しだけ快適になった世界で、私は生きていていく。



優しい人に出会えて、よかったなぁ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

奇行以上、疾患未満 @satou_oimo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る