第1話  死体が握る金

 日本の三大埋蔵金といえば、徳川の埋蔵金、秀吉の埋蔵金、結城家の埋蔵金と三種類あるらしいです。徳川の場合は江戸城の金庫に保管されているはずの御用金360万両を幕府が何処かに隠蔽したって言われているそうですし、秀吉の場合は、大阪城にあった四億五千万両を当面必要ないため埋蔵したって言われています。


 結城家の場合は、初代当主、結城朝光が武功を挙げた際に恩賞として受け取った金の延棒を、子孫の晴朝が埋蔵した。そんな三大埋蔵金以外にも、日本には多くの埋蔵金伝説が残されていたりするわけです。


 何でこれほど金が埋蔵されているのか、それは日本が金の産出国だったかららしいです。秀吉の時代には佐渡島から金がザックザック採掘されていたわけですし、黄金で作られた小判や延棒は、埋蔵しても腐らない。


 そのうちに取り出して使ってやろうと思っていた人が、山ほど居たってことになるのでしょう。


「ちょっ!待て!待て!待て!」

「なんだこりゃ!」

「嘘だろう!嘘だろう!嘘だろう!」

「金だ!金!」


 私が発見した源蔵さんの遺体は、明らかに腑を獣に食べられているような状態だったのですが、その源蔵さんの手に握られていたのは、金に輝く細い延棒。


「なっ!金っ!」

「嘘だろう!」


大正2年(1913年)6月、私は家族と共にブラジルのサンパウロ州にあるシャカラベンダというコーヒー農場にいました。


「金だ!金!」

「本当か!金だって?」

「なんで源蔵さんが金なんか持っているんだよ!」


 そのブラジルに契約労働者として連れて来られてはや4年、ブラジルにはコーヒーの木があって、真っ赤な実を一生懸命収穫すればあっという間に金持ちになって日本に帰れるんだよと言われて地球の裏側まで船で何ヶ月もかけてやって来てもう4年。


 騙されてコーヒー農場まで連れて来られて、鬱屈したまま毎日を生きることに精一杯で、とても、とても、金持ちになんか到底なれやしないという現実を突きつけられている日々の中で・・


「「「「何処で拾って来たんだよ!」」」」


 開拓途中の竹林に突き刺さった遺体を地面に置いた男も女も、驚き慌てながらも、這いつくばるようにして他にも金が落っこちていやしないかと探し回り始めたわけです。結局、金で出来た小さな延棒は、豹(オンサ)に喰われた源蔵さんが手に握り込んでいた一つだけしか見つけられなかったのですが、

「「「珠子!お前!他に金は見つけていないんだよな〜!」」」

 みんなが目を爛々と光らせながら、私の方を振り返ったわけです。

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