第1話⑫

その途端、油をかけられたようにろうそくの火が爆ぜた。火花をまき散らしながら、天井に届きそうになるまで火が大きくなるものだから、さっきまで好き勝手に動き回っていた魔本達は我先にと本棚へと戻っていく。

数秒後、燃え続ける火の中から、

「はい、お邪魔しますよー!」

という陽気な男の声と共に、火でできた上半身が飛び出してきた。

「どもども、ご苦労さん〜!おはこんばんちは!お元気〜?マギ専校長のマーリン・ルーカス・ランプライトだよ~ん」

人の形をした火は、部屋の中にいた四人の顔を順々に見ながら、あいさつをした。

「ランプライト先生、こんばんは」

ナタリアは正しく返礼した。

「どうも」とクロエ。

「へぇー。校長先生が出てくるところ初めて見た。めっちゃカッコいいですね」と言ったのはリナリィ。

「お呼び出ししてすいません、ランプライト先生」

コールマンは座したまま謝罪の言葉を述べた。

「ぜんぜんオッケ〜」

ランプライト先生は数世紀を生きる大魔法使いだった。魔法史で近現代史の教科書を開けば、その名前が出てくるほどには有名な人だ。人であればとっくの昔に寿命を迎えているはずだが、魔法の研鑽を続けたい一心で老いた肉体から魂を切り離し、火と一体化させることで今も生き続けている。

「リナリィ・エンデ君。コールマン先生が言ってたと〜り、キミ、ほとんどの科目が超ォ低空飛行しちゃってて、今のままじゃヤバいんだよねぇ〜」

「うっす」

「ちょっと……まじめに聞きなさい」

ナタリアがたしなめる。

「ただ、このままキミの操箒術が日の目を見られないまま埋もれてくのも、もったいないと思ってるワケ。キミ、箒乗りライダーとしてなら、マジでセンスありまくりだからさ」

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