第4話
アルシアの腕に装着されシュシュに擬態した俺は影獣(狼)が使えるようになった。魔力を10消費して影でできた狼を召喚し使役できるスキルのようだ。アルシアも「ウソ!? 私の火魔法が!?」と驚くくらい魔法の威力が上がったようで、魔力強化(小)も有効になっているようだった。逆に装備されていない状態でも使えるスキルもあって、空間収納(小)、五感、言語理解がそれだ。
五感は色々試したが実際に視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚全部あった。味覚など試しに廃墟の石畳に積もった埃を口(?)に入れてみたところ死ぬほど不味かったし、シュシュとして装着したアルシアからは女の子特有のいい匂いがしたので嗅覚もあるようだった。
神様に言われたとおり、ステータスとスキルツリーを表示してみたところ、表示されたステータスは魔力200、耐久値50、スキルポイント100、徳ポイント0の4種類だけ。スキルの種類と取得に必要な条件とポイントは以下の通り。
・属性魔法(火、水、土、風、光、闇) (小)各100、(中)各500、(大)各2000
・魔力強化(小)初期、(中)500、(大)1000
・影獣(狼)初期、(鷹)100&闇(小)、(熊)200&闇(中)、(虎)500&闇(中)、(飛竜)2000&闇(大)
・空間収納(小)初期、(中)500&光闇(中)、(大)2000&光闇(大)
・五感 初期
・言語理解 初期
・探知(小) 初期、(中)500&光(小)、(大)1000&光(中)
・形状変化200&土(中)
・透明300&風光(中)
・無音300&風(中)
・コピー300&土(中)
・念話300&光(中)
・硬化200&土(小)
・解体300&風(中)
・調理300&火水土風(小)
・鑑定100
・飛翔1000&風(大)
・転移2000&光(大)
・ダブルキャスト500、トリプルキャスト1000、クアドロプルキャスト2000
他にもスキルは沢山あるようだったけど、とりあえずめぼしいものをリストアップしてみるとこんな感じで、例えば「調理300&火水土風(小)」なら調理スキルをゲットするためには、スキルポイントが300と属性魔法火水土風の(小)が必要ですよー、ということ。「初期」とあるのは転生したときに神様がつけてくれたスキルだ。
とりあえず100あるスキルポイントのみで取れるのはこの中では各属性魔法(小)と鑑定のみ。迷いどころだけど、アルシアがかけだし魔法士で初級の属性魔法が使えるとのことだったので、ここは「鑑定」を取ることにした。
そんなことよりも俺は、アルシアみたいな美少女がなぜこんな廃墟でぼっちキャンプをしていたのかが気になった。聞いてみるとなかなか重たい事情があるようだった。
アルシアはここロズワール王国の国境近くにある農村生まれで、7歳の頃隣国であるアスバル帝国との戦果に巻き込まれた。幼くして両親を亡くしたアルシアは魔の森に入り死のうとしたところ、遅れてやってきた巨躯の国王ガロレス・ロズワールと当時8歳で燃えるような炎髪の第二王子アグニス・ロズワールに命を救われた。死の淵に立つ幼いアルシアに国王ガロレスは頭を下げて謝罪し、アグニス少年は「オレ様の目の前でこれ以上我が民が死ぬことは許さぬぞ!」とアルシアを泣きながら抱きしめたそうだ。
ロズワール王家に保護されたアルシアは魔法士としての才能を見出され、アグニス第二王子とその妹シャール王女ともに魔法学院に入学。三人は幼い頃からの友人として育った。ところがそれを面白く思っていないのが、氷のように冷たい印象の第一王子イグナス・ロズワールだった。
二人の対立が決定的となったのは彼らが魔法学院を第一王子イグナスを卒業する式典でのことだった。国王ガロレスは「次の王を我が3人の子のうちの誰とするかは、今から5年間の活躍いかんによって定めるものとする」という勅令を発した。それにより派閥を巻き込んでのお家騒動に発展。表面的な抗争は国王が禁止したため内戦にはならなかったが、水面下では血みどろの争いとなった。
そもそも家を継ぐ気がないシャール王女はアグニス王子についたため、二人と懇意にしていたアルシアは当然のように第二王子派とみなされることになってしまった。
悪いことに世間の評価では今のところイグナス第一王子が優勢と目されていた。第一王子に睨まれることを恐れるあまり、冒険者ギルドではアルシアとパーティを組んでくれる者はいなかったらしい。さらに初心者冒険者を導くべき立場のギルド職員すらも、普通ならアルシアみたいな状況の者には手を差し伸べそうなものを、一貫して冷たい態度をとったそうだ。
魔法学園を卒業し王家の保護から独り立ちしたアルシアは、冒険者として修行を積み、ゆくゆくは尊敬しているアグニス第二王子の右腕として仕えることを目標としていた。王家からの支援金も尽き宿を追い出されたアルシアだったが、王家を頼ることだけはせず、こうして廃墟で野宿をしていた。とそこへ俺が転生したきたというわけである。
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