第3話
「キャアアアアー!!」
翌朝俺の持ち主であろう美少女が目覚め、瑠璃色の美しい髪とサファイアブルーの瞳が朝日で輝く。美少女の枕元に折り畳まれた服の上で朝一番何と声をかけるのが正解か一晩中悩んだ末、俺は「おはよう可愛いお嬢さん、いい朝ですね! 俺の名前はシャーデンフロイデ! よろし……」と声をかけたのだが、ものの見事に失敗。美少女は悲鳴をあげながら俺をひっつかむと、全力で廃墟の壁に叩きつけた。
それから美少女は布団がわりのみすぼらしい布を
ちなみにシャーデンフロイデという名前は、魔道具っぽいヨーロッパ風の名前ということで自分で考えてみた。
それはさておき、俺に異世界に転生して早々の危機が訪れていた。さっきまで壁際で震えていた美少女は「これはきっとまた殿下が仕掛けてきた何かの罠よ……、切り刻んで燃やすしかないわ……」などとつぶやき、おもむろにカバンからナイフを取り出しこちらににじりよってきた。
「ちょい待ち、誤解だ! 俺は魔物じゃなくて魔道具だ、話を聞け!」
「…………」
俺に
その後俺は、この世界に魔道具として転生した経緯を必死に説明した。どうにか俺が魔物ではないとわかってくれたようだった。そして目の前のこの美少女の名前は「アルシア」だとということがわかった。
「そう、あなたも災難だったわね」
パジャマからローブ&キュロットスカートという装いに着替えたアルシアは俺を廃墟の大石の上に置くと、絶妙な距離を保ったまま言葉を投げかけてきた。まだまだ信用されているわけではないようだ。
「ま、そんなわけだから、俺はお前を手助けして徳とやらを積まなきゃならんのだ。魔法士なら俺を装備すれば魔法の威力があがるみたいだし、逆に人助けだよ思ってここは一つ!」
「はあ!? あなたを履くなんて絶対に真っ平御免よ!!」
ちなみにアルシアが服を着替えているとき俺は目を瞑らされていたのだが、「どうしよう……下着これしかないんだったわ……」というつぶやきが聞こえてきてしまったのはナイショだ。
美少女に履かれることを「男のロマン」と考える男性諸君も多いだろうが、俺は徳を積まねば人間に戻れないという事情がある。「男のロマン」とやらを叶えたところで徳が積めるはずもなく、むしろマイナスだろう。それに邪な気持ちがあるなら目覚めたアルシアに声をかけるなんて真似はせず、黙って下着のふりでもしていれば良かったのだ。そして俺はアルシアに声をかけ、徳を積むための手助けをするという選択をした。
「いや装備といっても体のどこかにつければいいだけなんじゃないか? 腕にシュシュみたいにして巻くとかさ」
街中で腕にシュシュをつけた女子を見てパンティーと勘違いした男子諸君も少なくないはずで、逆に言えば腕にパンティーをつけていてもシュシュと思われる可能性もまた高いはずなのである。
「それならまあ……」
と言いつつ、見ず知らずの元16歳男子を腕に装着するというのはやっぱり年頃の娘的にはNGらしく、苦虫を噛み潰したような表情で渋々了承するアルシアであった。
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