第39話 迫力と感動【7月】

「じゃ、ミーティング始めるぞ」

「よろしくお願いします!!」


部員全員が久しぶりに揃って、自然と俺も気合いが入る。

テスト前より、部員たちの視線も熱い気がした。


「まず、テストお疲れさん。野田から既に聞いているが、赤点を取ったやつはいないようで良かった。全員でコンクール観覧に行ける」

「やった!」

「よかった〜!」

「楽しみだね!!」


みんなそれぞれ喜んだり、安心した表情だ。

でも、コンクール観覧には大きな意味がある。

行くだけで満足していては、この後の成長に繋げられない。


「はい、一旦落ち着け。コンクール観覧までまだ少し時間がある。それまでの間、とその後夏休み中は部活三昧にするつもりだ。外せない予定があるやつは今から配る用紙に記入して提出してくれ」

「はい!」

「それと、これも配る。今日以降の練習スケジュールだ」


今日、結城から連絡をもらってから放課後までの間、授業がなくて助かった。

この練習スケジュールを考えて、部員たちがどんな反応をするのか楽しみだった。

彼女たちの青春を背負っている以上、無駄な時間は過ごさせたくない。

部員もコーチも揃っている今、ベストを尽くすならこのスケジュールだと思った。


「わぁ!ほぼ毎日部活できるんですね!しかもコーチに見てもらいながら…」

「嬉しいです!ありがとうございます!!」


ほら、俺の予想通りだ。ちょっと過密くらいでいいんだ。

練習スケジュールのカレンダーには、週1〜2回【自主練習(自由参加)】と書いた。

体力・気力的に疲れ切った状態では、いくら練習してもただ疲れが増すだけ。

闇雲に練習しても意味がないことは、誰よりも俺が一番分かっている。


「自主練習の日は、本当に自由参加だ。休むことも成長には必要だからな。それに、体力や気力をどう持続させるか考えるのも大切だ。不参加だからやる気がない、とかそんなこと誰も思わないから、休みたいときはちゃんと休めよ」

「はい!ありがとうございます!」

「で、結城から連絡があったのは、今度の土日から夏休み中の特訓に付き合ってもらう新しいコーチ陣の話だ」

「コーチが増えるんですか?!」

「ありがたいことに、結城が手配してくれた。次会ったらちゃんとお礼しよう」


更に歓声が沸き起こる。指導者に恵まれることは、本当に幸せなことだ。

俺も、部員たちが大人になってから『指導者に恵まれた』と言ってもらえるような顧問にならないといけないな。


結城が手配してくれた音大卒コーチは2人。俺は直接話した記憶はないが、2人は俺がここの顧問だと知って引き受けてくれたらしい。


「今度の土日どちらかで新しいコーチが2人来てくれるはずだから、それまでに演奏の感覚取り戻しておけよ。ちなみにパートは、トランペットとクラだからな」

「はい!!」


俺の最後の一言で部室の空気が張りつめた。

新しいコーチが来ること、それはワクワクすることかもしれないが同時にものすごく緊張するだろう。

クラを担当している副部長の斉藤、1年で入部したばかりのトランペット担当大山。

この2人からは特にそれが伝わってくる。

でも、圧倒的に上手いやつを真近で見られるのは本当に良い刺激になる。

今度の土日が楽しみで仕方ない。

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