プロローグ

えりかの過去 ①


 ”2022年9月8日"


 私は、この日を一生忘れない。

 この日、私は壊れた。

 いじめに遭っていた、自分の心がついに限界を迎えた日。

 目に見えて何かをされていたわけではないけど、仲が良かったはずの友達が陰で悪口を言っていたり、吊し上げをされたり、ありもしないことの噂を流したり、、、いろいろなことをされた。いつからか、周りの視線は冷たいものになってた。でも直接的には何も言って来なかったから、知らないふりをしてた。

 だけど、この日は違った。午前最後の授業、"それ"は起きた。

 A「えりかって夏休みに怪我をしたのに同輩の私に何も言わないで隠してるんだ

  よ。ひどいよね。」

 B「うん、うん。」

 C「確かに。」


 理由は私が、怪我をしたことをずっと言わなかったからなんだって。その怪我は夏休み中の部活で膝を酷使し過ぎたことによる膝蓋腱の炎症だった。ただ、理由がその時は曖昧だったから迂闊に変なことは言えないから黙ってただけなのに。


 私「ちょっと待ってよ。Aちゃん。事情があって。それに」

 A「逆ギレしないでくれる。」

 B「えりか、逆ギレやめなよ。」

 C「そうだよ、やめなよ。」


 すかさず、訂正しようとした。でも、聞き入れてくれなかった。この時だけではなく、前にも怪我のことについて、いくら同級生とはいえ、部活外の人に言いふらされていた。口には出さないものの、周りからの冷たい視線に耐えられなくなった私は休み時間になってすぐに、友達のところに駆け込んだ。でもAがすぐにきて、相談もできないまま、トイレに引き摺り込まれて後から来た何人かが来て3人がかりでネチネチ責め立てられた。いくら弁解をしても聞き入れてもらえず、最後にこう言われた

「怪我をしたなら、もう部活できないね。バスケなんか無理じゃん。」

 その瞬間私の中で何かが切れた。

 今日だけじゃない。前にも何度もこう言うことはあった。でもその度に関係性を壊したくないから、何を言われても自分が悪いと思って必死に我慢してた。でも、そんなのもう無理だよ。

 担任の先生に言って、午後は保健室で過ごした。

 その日から私は保健室登校を始めた。保健室の環境も、あまり良くはなかった。最初の1ヶ月はAが保健室まで来てネチネチ言って帰っていくことが数回あった。先生は止めてくれなかった。

「普通にしていればいい。」

 その一言で済まされた。学年主任は

「本人たちに指導をする。」

 そう言っていたけど、指導をし始めたのは"あの日"から1ヶ月経った10月だった。

 大人なんて口だけで信用ならないね。


 指導が入り始めて、もう私に何も話しかけて来なくなった。でもね、もう手遅れだった。顔を見るだけで、動悸がしてきた。私の心に不安が棲みついた。死にたいって思うようになった。生まれてきた意味がわからなくなった。ビルの屋上に立った。でも死ねなかった。そのままずるずる、死ねなくて気づいたら、冬が来て、春が来て、もう6月になっていた。





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