チート転移魔法使いは魔物で溢れ返った地球を陰から支配したい!~0から始めるやり過ぎ暗躍ライフ~
ナガワ ヒイロ
第1話 地球に魔物が溢れ返った日①
『地球人類の皆さーん!! こんにーちわー!!』
学校や仕事が休みとなる日曜日。
まるで朝の教育番組の如く、男性とも女性とも思える中性的な声が頭の中に響いてきた。
こ、こいつ、直接脳内にっ!!
などとネタに走りつつ、俺は軽いパニックに陥ってしまう。
そりゃまあ、誰だっていきなり知らない人の声が聞こえてきたら驚く。
主に「自分の頭がおかしくなったのでは?」という不安でね。
なのでひとまず、ツブヤイッター(今はYという名前だが)で情報を集めてみようとスマホを開いた。
しかし、何故かネットに繋がらない。
というか電波も無い。おかしい。我が家はそこまで未開の領域にはない。
再び困惑していると、謎の声が楽しそうに笑う。
『あ、ごめんねー。この世界、もうボク好みの世界にする改造が始まってるから電波とか消滅してるんだー』
なんてこったい。
ということは、俺が今までスマホゲームに課金していたお金は無駄になってしまうということか?
そんな残酷なことってあるか?
『申し遅れたね。ボクは異界の神。地球の神から借金のカタとしてこの
おい地球の神。
なんてもんを借金のカタにしてんだコラ。絶対に許さんぞ。
お前のせいで俺のスマホゲーがおじゃんになったじゃねぇか、ぶっ殺してやる。
『この世界はいいね。便利だし、面白いものが沢山ある。でもボクは秩序のある世界より、混沌と血と悲しみを、友情と努力と勝利を求める世界が好きなんだ』
なんかジャ◯プみたいなこと言ってる……。
ボーッとベッドに寝転がりながら、俺は神の声の続きを聞くことにした。
『だからさっきも言ったように、この世界はボク好みに作り変える。具体的には魔物とステータスが存在する、まるでゲームのような世界さ』
ほほう、ゲームですと?
スマホゲームのデータを失ったばかりの俺には嬉しい世界ですな。
んなわけあるか。ゲームはゲームだから面白いの。現実がゲームみたいになるとか冗談じゃないぞ。
『この世界では純粋な暴力こそが正義。銃とか爆弾とか、そういう汚い力は許さないよ。ボクが地球人類に求めるのは、戦いだ。血沸き肉踊る命の奪い合いだ。魔物と、人と、あるいは神であるボクと。戦い、殺し合おう。それがボクの所有物となった君たちに対するボクなりの愛情さ』
この神様、歪んでらっしゃるなー。
いや、古今東西。
神という存在は得てして理不尽かつ自由気ままなもの。
まだSAN値をゴリゴリ削ってくるようなヤバめの神様じゃないだけマシか。
……マシかな?
自分好みじゃないからって世界を作り変えちゃう時点でかなりの邪神のような気がするけども。
『とはいえ、君たちは文明に支えられて生きてきたが故に無力だ。だからボクの慈悲を授けようと思う。今生きている君たちの個性や思想、あるいは魂の情報を元にランダムでスキルを授けよう』
ほほーん?
なんて太っ腹な神様だ。邪神とか思っちゃってゴメンね。
『あ、完全にランダムだからクズスキルをもらっても恨まないでね? 強力なスキルでも使いこなせるかどうかは受け取った本人のセンス次第さ。それは君にピッタリなスキルだから授かるのであって、そこにボクの意志は無いからね。ボクは平等に君たちを愛している。はい、ボクからのプレゼントだよ』
と、その直後。
目の前に半透明なゲーム画面のようなものが出てきて視界を覆いやがった。
ビックリするやろがい。
〈神os001gk9から
ふむ、〔転移魔法Lv1〕ですと?
転移系の能力と言ったら、ラノベや漫画では間違いなく最強格のチートじゃないか。いいの?
『今、君たちの目に映るそれはステータス。レベルを始めとしたあらゆる能力を数値や文字として記録するもの。レベルが上がったりした時にお知らせしてくれたりもするよ。本人の意志で出したり消したりできるからやってごらん』
やってみる。
出た。消えた。出た。消えた。なにこれ超面白い。
『さあ、チュートリアルはここまで。魔物や人と戦い、レベルを上げて強くなるか。あるいはスキルを鍛えて強くなるか。自らの無力さに喘ぎ苦しみながら死ぬか、秩序を失った世界に新たな秩序を作るのか。ボクは何があっても、君たちを愛し、常に見守っているよ。さあ、ゲームの始まりだ!!』
その一言を最後に、ピタリと神の声は聞こえなくなってしまった。
転移魔法、転移魔法か……。
「お、なんか使えそう」
試しにテーブルの上に置いてあるテレビのリモコンを取ってみようとした。
すると、俺の中からスッと何かが抜けるような感覚があった。
MPとか魔力とか、そういう感じのものだろう。
試しにステータスで確認してみたら、MPの項目があって減っていた。
どうやら俺の推測は正しかったらしい。
リモコンと俺の掌を包むように魔法陣と思わしき幾何学的な文字列が並ぶ。
そして、一瞬だけ光ったと思ったら俺の手の中にリモコンがあった。
「うっ、なんか凄い疲れるな……」
どっと肩が重くなる。
魔力消費が激しいとか、そういう感じのスキルなのだろうか。
まあ、使えるなら何でもいいや。
「お? 外から悲鳴が聞こえる……」
俺は部屋の窓から外の様子を窺う。
路上で緑色の肌をした子供くらいの大きさの魔物が複数体で女の人を襲っていた。
ゴブリンだ。
「うーわ、犯しながら女の人を食ってる。怖っ。あ、通りすがりの男性が助けに入った」
男性がどこからか持ってきた石をゴブリンに投げつける。
しかし、ゴブリンはそれを回避して、男性を囲んでボコボコにした。
女の人は助けてくれた男性を見捨てて、その隙に逃げ出す。
ゴブリンは女を逃がして激昂し、お楽しみの邪魔をしてきた男性の手足をへし折って爪で切り刻み始めた。
「本当に無法地帯、だな」
この世界じゃ明日も生きられるか分からない。
真面目に生きるなら、すぐにでも食料や水を確保すべく動くべきだ。
でも敢えて一つ言うなら。
「俺、どんなゲームでもエンジョイ勢なんだよね」
俺の名前は
転移魔法の使い手であり、この秩序無き世界を楽しみながら生きる者。
「とは言え、目標は欲しいな。生存、はちょっとエンジョイ勢っぽくないし、何かでっかい目標はないものか」
その時、少し大きな地震が起こった。
神がこの世界を自分好みに作り変えているからだろうか。
本棚の漫画やラノベが何冊か床に落ちる。
その何冊かの本の中に、俺の好きなライトノベルが混じっていた。
主人公たちの預かり知らぬところで物語に介入する、いわば陰の実力者に憧れる少年が異世界に転生して無自覚で世界に波乱を起こす物語。
「そうだ、どうせなら暗躍したいな。このラノベの主人公みたいに仲間も集めて、秘密結社みたいなのも作って……。ふふふ」
俺の目標は決定した。
秩序無き世界をエンジョイしながら生きていくための目標。
それは……。
「この魔物で溢れ返った地球を陰から支配する。この転移魔法の力で」
そのためには力が必要だ。
そして、その力を得るための方法を神は俺たち地球人類に与えた。
ステータスである。
というわけでレベリングだな。早速魔物を狩りに外へ行こう。
―――――――――――――――――――――
あとがき
ワンポイント一言
神様の容姿はご想像にお任せします。強いて言うならAPP18です。
「邪神やんけ」「人生エンジョイ勢は草」「どこぞのニャルやんけ」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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