明日もし、私が死んだら。

海羽

第1話

 つまらない、つまらない、つまらない。

 ――何もかもがつまらない。

 

 SNSの海に流れてくるのは周囲を見下す言葉の数々。滲み出るような悪意。わかってる。自分もそれを見て冷笑して、見下しているだけの一人に過ぎないことを。

 

 相変わらず文字の羅列をスクロールしていると、ポケットにしまった呼び出し受信機がバイブレーションと共にうるさく鳴り響いた。そんなに大音量でなくとも十分聞こえるのだが、年寄りばかりの病院という場所においては仕方のないことなのだろう。


「今日のお支払いは……、特にありませんね」

「わかりました、ありがとうございます」

  

 何度も通っているせいで、既に今月は限度額のようだ。そそくさと手続きを済ませ、飛び出すようにして病院を後にする。こんな場所に長居していると心が腐っていく感じがしてならない。鼻にこびりつくような薬品の臭いは死の気配を感じさせる上、誰しもが陰鬱な表情を浮かべているのだから当然だ。しかしまあ、外に出たところでこの閉塞感から逃れられるわけでもないが。

 

 大通りを行き交う人々の喧騒は今の自分にとっては疎ましいものでしかなかった。明るくて賑やかな声も、視界に入る幸福も、自身の孤独を際立たせる存在でしかない。醜い現実から逃れるためにイヤホンを耳に差し込むと、俯きがちになりながら駅へと足早に向かった。やっぱり音楽はいい。街のざわめきはぴたりと止んで、気づけば普段通りの、平穏という名の孤独だけがそこにあった。

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