54.招かれざる神
核保管庫の近くに男女が二人。
二人の名はルーシア、クロード。
そして二人の先には子供のようにも見えるが青年のようにも見える男が立っていた。
「ふふ、またおもしろいもの見つけちゃった!」
「どうやら俺達以外にも招かれざる客人がいたようだ」
青年はルーシア達の方に体を向けながら話し始める。
「随分酷いことを言うね。それにその言い方、僕が誰かってわかってるみたいだね」
「遥か昔から世界を混乱に陥れてきた最悪の組織、
「いやぁ、なんかねぇ、僕達の探し者に手をつけようとする良くない人達がいてね。正直この核? とかいうやつには興味ないんだ」
「興味がないのならどいてくれ。僕達は早急に遂行する必要があるんだ」
「まだ気付かないの? だぁかぁらぁ!! お前ら二人のことだよ。余計なことしないでくれる?」
「何かをした覚えなんてないが」
「ちょっと口が悪くなっちゃったね。優しく言うとこの場所から早く消えてほしいんだ。邪魔をされると困るからね!」
「こっちも同じ意見だ」
「そう、なら仕方ないね。どうせこの建物が完全に崩壊すれば君達も消えるんだから付き合ってあげるよ」
クロードは横にいるルーシアに防御結界を付与したあと自身にも防御結界を付与しいつ攻撃されても防げるようにした。
付与した防御結界は今までのとは異なり何層かを重ねることでさらに耐久性をあげている。
その耐久性は核を守る結界に匹敵するいやそれ以上の可能性もある。
剣を羽織っている服の中から取り出し堂々と構える。
一方ルーシアは何かを企んでいるのかわからないが少しだけクロードとの距離を取るために後ろに移動した。
レントールは二人を目の前にして慄くという様子はなくむしろ微笑んでいた。
クロードはいよいよ剣を握りしめレントールの方へと歩きながら近づき始める。
両者余裕があるようで異様なまでに落ち着いていた。
「僕は君達を消せるなら本気だってだしてあげるよ。ただ本気を出すのにふさわしくなかったら出せないけどね」
「ならば一瞬で引き出させてやる」
クロードは剣先を地面に向けたあと一度レントールの方に向け次に天に向ける。それを歩きながら行い振り上げた剣をレントールの近くまで来たところでとてつもない速さで振り下ろした。
シュンッ!!! という鋭い音が一瞬だけ鳴った。
だがレントールはクロードの攻撃を容易に避け腕を組みながら二人を見ていた。
「防御結界かぁ、早めに潰さないと厄介なことになりそうだね」
「ようやく気づけたか。学習出来てよかったな」
「君は先手が当てられなかった事を悔いた方が良いと思うけどね」
「後悔など一度もしたことがなければこれからも後悔することなどない」
クロードはレントールの方に駆けだす。
まずは一振り、そしてまた一振り、何度も振って振って振り続けてはレントールにそれを簡単に避けられていく。
しかしここでクロードはあえて剣を振らず剣先をレントールに向かって突き出した。
いきなり攻撃の仕方が変わったレントールはやや驚いていたがすぐに対応し後ろに回避をしようとした。
だがクロードはこの瞬間を狙っていた。
「かかったな」
後ろにさがってクロードの攻撃を回避しようとしたレントールの背後に防御結界を展開し行き場を失わさせる。
そうなると恐らく左右または上に移動すると考えたクロードはさらにレントールの左右と上を防御結界を展開し行き場を潰していく。
クロードは開いている一箇所に向かって剣先を突き出して走っていく。
「随分面白い使い方をするんだね。気に入った。僕もちょっとは力を見せてあげるよ」
「させるか」
クロードが強く握りしめている剣の先がレントールの体にあと少しで刺さろうした時後ろで崩れていく核保管庫の瓦礫が何かに操られたかのように異常な速さで飛んできた。
クロードの剣はその瓦礫にぶつかり弾き返されてしまう。
その後も立て続けにレントールの目の前に鉄の瓦礫がとてつもない速さで飛んでくる。
危険だと感じたクロードは一度ルーシアのいる後ろに後退した。
「クロード、何してるの? つまんないんだけど。早く終わらせて」
「今置かれている状況がわからないのか。馬鹿にも限度ってものがあるだろ」
「私は馬鹿じゃないし! ただ楽しいことをしてたいだけ。なのにクロードがいつまでもいつまでも時間をかけてるから私は怒ってるんだよ! だから、早くし・て・ね?」
「やはり一緒に遂行しようと考えた僕が馬鹿だったみたいだ。価値観が違う、そんなこと最初からわかってたのにな。防御結界は解除する。これ以上余計に体力を消耗すると僕が危うい」
「ふふ、勝手にすれば〜? 私は思うままに生きる! それが私、ルーシアなんだから〜!!」
ルーシアのあまりにも状況を理解していなさすぎる言動に呆れこれまで付与していた防御結界を解除した。
二人がそんなことをしている間にレントールの前には徐々に瓦礫が集まり何かを形成していく。
クロードは今から起きようとしている事に焦りや驚き、ワクワクを感じながら額から汗をたらしている。
「次は僕の番だね。さぁ、力の片鱗でも見せてあげるよ」
レントールがまるで二人を小馬鹿にしているような口調で言うと鉄の瓦礫が大きなオーク、トロールに似た形状をしたものになっていた。
自我があるのかそれともレントールが操っているのかどちらかはわからないが鉄の瓦礫にまるで命が宿ったかのように腕の部分と思われる場所がビクッと動いた。
その後クロードの心の中で疑問は確信へと変わる。
鉄で形成された化け物は少しして本格的に動き始めた。
「まずはこれで遊んでみてよ。きっと面白いからさ」
すると鉄の化け物はクロードの方に足を一歩動かし出した。
クロードは片手で剣を握りしめもしもの時の為にもう片方の手では剣を持たないようにした。
鉄の化け物は一歩前に進むと停止したと思いきや手を握りしめ地面にいるクロードに向かって殴りかかった。
クロードは剣を持っていないもう一方の手で防御結界を何層にも渡って自身の目の前に展開する。
そして鉄の化け物の拳が防御結界に衝突するととてつもない音が響き渡ると同時にクロードは徐々に押されていく。
鉄の化け物の拳の威力は凄まじく既に地面に亀裂が入っていた。
その中クロードは押し負けないように歯をくいしばりながら防御結界を展開し続ける。
「クロード、何してるの? まさか本当に厳しいとか? そうじゃないならもっと頑張らないとだよ!」
「黙ってろ!!!!」
「こわ〜い!」
危険だと言うのにルーシアはクロードの近くからは離れずただずっと負けそうになっているクロードを見て楽しそうにしていた。
「ずっと防御結界されてちゃ困るから、次のステップいくよ!」
レントールはそう言って両手を合わせて一回だけ叩いた。
すると鉄の化け物は明らかに先程までとは様子が異なりより一層クロードの防御結界を押し始めた。
少しするといよいよ防御結界の限界が来たようで一層だけヒビが入った。
「馬鹿な……僕の防御結界はそう簡単には破られないはずなのに……」
「僕には通用しない。君の常識もこの都の常識も世界の常識も。だって僕は
「……ッ!!」
片手ではもう耐えられないと思ったクロードは剣を地面に落とし両手で防御結界の維持と再展開を行い始めた。
だが時間が進む事に結界は何枚も割れていく。それに合わせて再展開を行っていくがもはやそれも時間の問題である。
接戦をしていると再びレントールが両手を合わせて手を叩く。
するとまたもや鉄の化け物のちからは強まり先程までよりも早いペースで結界が次々に割られていく。
クロードがこのままでは……と思った瞬間鉄の化け物がもう片方の手でも拳を作り殴りかかった。
もう片方の威力に耐えきれなくなった防御結界はパリンッパリンッパリンッと連続して割れていく。
そしてクロードに付与されていた防御結界も割られそのまま地面に叩き潰されてしまった。
激しい砂埃が舞い上がり状況がわからなくなっていると鉄の化け物は片方の手を元の位置に戻した。
砂埃が少しして消えるとクロードはえぐれた地面に血を流しながら横たわっていた。
そしてその隣では鉄の化け物の拳がルーシアの
「こっちの方が厄介だったか。僕としたことが見誤ってしまったよ。それより楽しい時間はここまでにしておこうか。僕はまだ出番じゃないからね」
「次会う時は私のことを楽しませてね!」
レントールが二回手を叩く。すると鉄の化け物は小さな鉄の玉になりレントールの手のひらに落ちた。
一方ルーシアは倒れるクロードを見て微笑みルンルンとしながらその場を離れていった。
「せいぜいゆっくり眠りなよ」
レントールは内ポケットから小さな刃物を取り出すとそれを高く上空に投げる。
刃物は上まで上がるととてつもない速さで落下していく。その刃物の落下地点はクロードの心臓部分だった。
しかしクロードは起き上がろうにも足も腕も完全に潰れておりどうしようもできなかった。
そしてそのまま刃物はクロードの心臓に突き刺さる。
血がじわーっと広がっていくと同時に体が徐々に光となって空に向かっていった。
レントールはその姿を見ることはなくどこか知らないところへ歩き出した。
「さて、魔女。君は絶対に僕達のものにするから。逃さないよ」
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