40.次に目指すは……

「あ、ハルト。ちょうど準備が出来てきたところだから。もう少し待っててね」


 ハルトが表に戻るとそこには長い机が用意されその上に沢山の豪勢な食事がずらーっと並べられていた。ハルトはすることがなく暇だったので一つの席に行き座りぼーっとしていると横の席にロイドが座ってきた。


「ハルトさん、今回は色々とありがとうございました」


「いえいえ」


「これからはより平和に暮らしていけそうな気がします。父があんなに笑顔なのは久しぶりに見ました。ハルトさん、もし困った事があったら遠慮なく言ってください!」


「そうさせてもらいます」


「あ、もう料理食べちゃっててもいいですよ」


「ほんとですか」


「はい! それじゃあまだ準備のほうがあるので戻りますね。楽しんでください」


 そう言ってロイドは立ち上がりどこかに歩いていった。一方ハルトはお腹が空いていたということもあり目の前に並ぶ料理を見てよだれが止まりそうになかった。そしてついに料理に手をつける。


「んまッ!!!」


 一度口にしたらそれはもう忘れられないほど癖になる味だった。ハルトはひたすらその料理を手に取り食べる。そんな事をしていると次第に準備を終えた村民達が続々と席に座り始めた。料理を食べながらハルトはあの二人遅いななんて思っていると後ろからやってきてハルトの両隣に座り込んだ。


「ハルトがもう食べてる」


「食べてもいいって言われたからな」


「私も」


 シノが料理に手をつけようとしたときロルガルドがコップを持って立ち上がる。


「皆の者、この村はもはや恐怖に怯える日々から解き放たれた。それもこれもハルト、シノ、ラムネ。この御三方のおかげじゃ。今回はそんな彼らに感謝の意を伝える為盛大にやろうではないか! では皆、前にあるコップを手に取るのじゃ」


 ロルガルドがそう言うと村民の皆はお酒の入ったコップを手に取り掲げ始める。ハルトも食べるのを止めてコップを持ち同じ様にする。シノとラムネも同様にコップを掲げた。


「御三方に感謝を込めてぇぇぇぇ!!!!」


「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」


 掛け声が終わると皆お酒をグビッと流し込む。そして色々な談笑をしながら楽しい一時がはじまった。ハルトの隣ではお酒を一気に飲み込んだあと料理をばくばくと食べているラムネの姿があった。


「よくそんなに食うな」


「全部ハルトさんのせいですよ。一体いつぶりだとおもってるんですか!!!!」


 そしてハルトも料理を再び食べ始めた。しかしその時ハルトは腕に何かの重みを感じた。一体何かと思いハルトは横を見てみると眠ってしまいハルトに寄りかかっているシノの姿があった。どうやらお酒を一気に飲んでしまった事で酔ってしまったようだ。ハルトは寝ているシノが変な方向に倒れないように様子を見ながら食事を楽しんだのだった。



@@



「はぁ〜こいつ、ほんと酒に弱すぎるだろ」


「私は強いですけどね!」


 楽しい宴は終わった直後ハルト達はアリアに今日はもう遅いからと言われ泊めて貰うことになった。そしてハルトはシノを抱き上げベッドまで連れていき寝かせる。


「ちょっと外行ってくる」


 シノをベッドに置き布団をかぶせたハルトはラムネにそう言って家を出た。家の前の少ししかない階段に座り込んで星空を眺める。しばらく色々と考えごとをしていると扉が開く音が聞こえてきた。ハルトは気になり後ろを向くとそこにはラムネが立っていた。


「なんかあったんですか? ハルトさん」


 ラムネはそう言いながらハルトの隣に座り込み一緒に星空を眺め始める。


「ただ昔の事を考えてただけだよ。それよりラムネ、そんな格好で夜に外に出てきたら風邪ひくぞ」


「大丈夫ですよ! 私頑丈なので!!」


「確かに馬鹿は風邪引かないっていうしな」


「ば、馬鹿ってなんですか!!!」


 ハルトは発言に反応したラムネにコートを脱ぎそっとコートをかけてあげる。かけるときラムネの肩にハルトの手が触れ思わずラムネはビクっとしてしまった。


「あ、ありがとうございます……」


「風邪引かれたら困るから貸してるだけだ」


「……わかってますよ。それくらい」


「そう言えば助けて欲しいことがあるって言ってたよな」


「そうですよ! やっとことが片付きましたしお願いします!!!」


「いいけど、助けて欲しい内容を知りたいんだが」


「それは見たほうが早いと思うので! 早くいきましょう!!!」


「そうか。んじゃ明日朝イチでいくか」


「はい!!」


 ハルトは立ち上がり扉の方に向かい出す。


「待ってくださいよぉ!!!」


 ラムネも急いで立ち上がりハルトについていったのだった。



@@



 翌朝。


 馬車に数少ない荷物を乗せて出発する準備をしていた。そこにアリアやラット、村民の人達が集まってきていた。どうやらハルト達を見送ってくれるようだ。準備が終わりハルトがアリア達に礼を言いに近づいた時アリアが大きな袋を抱えだしハルトに渡そうとしていた。急いでハルトはそれを受け取る。想像以上にその袋は重く思わずハルトはふらついてしまった。


「これは果物とか野菜とか食料が入ってるわ。これだけじゃ恩を返しきれないのはわかってるけど最初はこれで許してね?」


「ありがとうございます。皆さん、本当にありがとうございます!!」


 ハルトは丁寧に礼を言う。後ろでは軽くぺこっとお辞儀をするシノと絶対下げ過ぎなラムネがいた。礼を言ったハルトは貰った荷物を馬車に入れ込んだ。


「それじゃあ、皆さん。またどこかで!!」


「元気でな!!!」

「また来てね!!」

「ワシが死ぬ前に来るんじゃよ!」

「ちょっと父さん、変な事言わないで! あ、ハルトさんまたいつか!!!!」


 シノとラムネは馬車の荷台に乗り込んだ。今回馬車を操縦するのはハルトである。操縦は未経験だがなんとなくやってみたかったそうだ。馬車の後ろでは村民の人達がハルト達に向けて手を振っている。それに対してラムネは勢いよく手を振り返していた。


「行くぞ」


 ついに馬車が動き始めた。


「ハルト、上手」


「初めてとは思えないですね!!」


「案外いけるもんなんだな」


 初見でも案外出来た事にハルトは驚いていた。


「えーっとそれでどこに迎えばいいんだ?」


 ハルトが聞くとラムネはハルトの方に移動してきてよくわからない方向を指さして大きな声で言い出す。


「次に目指すは夢の都【レアルタ】です!!!!!!」


 こうしてハルト達は夢の都【レアルタ】に向かうのだった。



「耳元で叫ぶな!!」


「った!! 今叩きましたね!! これはもれなく極刑に処しますよ!!!」


「ラムネの言っている意味が理解できない」


「するだけ無駄だ」


「それは酷いですよぉぉぉ!!!!!!!」

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