11.この世界の事とパンツ
夜に本日二回目の魔法特訓をする事にしたハルト達は夜になるまでの時間を潰す為に家に戻った。しかし家の中には先に戻っていたはずのアリアの姿はなかった。
その時ハルトはアリアの元気がなかった事を思い出しそれが原因でどこかへ消えてしまったのではないかと焦りシノと一緒に家の中を探し始めた。初めに二階に駆け上がったシノが一部屋一部屋扉を開けて確認しているがやはりアリアの姿はなかったようでシノは頭の上で手でバツ印を作ってハルトに知らせた。それを見たハルトはもしかしたらと思って家の外も確認してみる。シノを家の中においてハルトはまず家の裏の小屋に行ってみることにした。小屋に着いて扉を開けると中にはしゃがみこんだアリアの姿があった。
「こんなところにいたんですか! アリアさん」
「あれ、ハルトくん? どうしたのそんな慌てた顔をして」
「あ、いやアリアさんが元気なさそうな顔をしていたのでどこかに行ってしまったのかなって」
「そうなのね、でも安心して。私はただ二人の服を洗濯してただけだから」
するとアリアは揉み込んでいたハルトの服を見せる。ハルトが入ってきた時はアリアの体で見えなかったが下には桶の中に服や下着が入っておりそれを揉み洗いをしていたようだ。
(変な勘違いしてしまった。はずっ)
「でも元気って言ったら嘘になっちゃうかもね」
「え?」
「ロルガルドさんが言ってたの覚えてる? 前にラットって男が犠牲者になったって」
「はい。誰にも相談せずに居なくなったとか」
「ラットはね言葉より先に行動を起こしちゃう人で時にはイラってするときもあってでもここぞって時は助けてくれたりいつもいつもそんな感じだったの」
桶に張られている水からポチャンという音が聞こえてくる。アリアの声が次第に震えてくると同時にポチャンという音の回数も増えていった。
「……私はそんな馬鹿と一緒にいる時間が何より大好きでかけがえのないものだった。でも彼はやっぱり馬鹿だったの。犠牲者の話がこの村にやってきたその日の夜にラットは【ロイゼン王国】に一人で走り出してしまった。そしてそれ以降帰ってこなかった。馬鹿よね。ほんと……馬鹿」
「……アリアさん」
「関係ない話しちゃってごめんね。あ、そうだハルトくんも手伝ってくれる?」
「あ、はい。もちろん」
(はっきりと言ってはいないがラットさんはきっとアリアさんにとって大切な存在だったんだろう。それなのに神託官は……)
もうひとつ用意されていた桶の前にハルトもしゃがみこんだ。するとアリアが「じゃあこれをお願い」と言って絶対ハルトのやるべきではないシノの下着などなどを桶の中に入れた。ハルトはそれを持ち上げ返そうとするがアリアはそれを拒んだ。
「アリアさん!? さ、流石にこれは……!!」
「なに〜? いっつも一緒にいるんでしょ。これくらいこなさなきゃ」
「俺とシノは出会ってそんなに時間経ってませんから!!」
「あれそうだったの? てっきりもう長いこと一緒に旅してる冒険者かと思ってた」
「実はとある事情でここに来てて……」
「そうなのね。そう言えばハルトくん、気になってたんだけど黒髪なのね」
異世界特有の黒髪を恐ろしい者とするやつかとハルトは思った。しかし別に怪しいやつでも恐ろしい者でもないハルトは本当の事を打ち明けようかと悩んだ。そして悩みに悩んだ挙げ句アリアに本当の事を話すことにした。
「俺はこの世界の人間じゃないんですよ」
「え!? あ! もしかして魔の災害を止める為に【ヒルアール王国】で召喚された人達ってハルトくんなの?!」
あまりにも驚きすぎたアリアは桶に腕をバチャンと突っ込ませ水が飛び散った。アリアは水がハルトにかかってしまった事を詫びるがハルトは全くそんな事を気にしてはいなかった。なぜならアリアのリアクションがあまりにも良いものだったのでハルトはなんだか嬉しくなっていたのだ。
「という事はここに来たのは魔の災害関係ってこと?」
「それが俺、
「わかったわ」
「それで色々あって死にかけているところを助けてくれたのがシノなんです。それでシノの方も何やら事情を抱えてるみたいでひとまずどこかに行こうってことでここに来たんです」
「ハルトくんも大変なのね。
「確かに最初は
(こんな鬼畜な異世界……抗ってやるしかないだろ!!)
「でもやっぱり
「大丈夫です。アリアさんは安心して待っていてください」
「……何か困った事があったら遠慮なく言ってね。私がなんでも教えてあげるから」
(なんでもか……。これからぶっ潰す神託官についてでも聞いておくか)
ひたすらハルトの服を揉み洗いしているアリアに神託官について詳しい事を聞いてみることにした。ハルトが聞くとアリアは揉み洗いをしながら質問に答えてくれた。
どうやらアリアが言うには神託官は全四人で構成されているそうでその四人の中にも位があるらしい。
第四神託官の名はヴィーネ・ウィンテール。
彼女は気まぐれで他の神託官と度々揉めているとか。
第三神託官の名はロイエル・リヒルバーン。
ロイエルは何事も結果主義でこれまでも何度も村は酷い仕打ちを受けてきたそうだ。
第二神託官の名はアッシュ・ドルレアン。
ガタイの良い男だそうで一度村に来た時唐突にキレて村の木をいとも簡単にへし折ったそうだ。
第一神託官の名はメルリル・クリウォーネ。
彼女は今まで村に来たことはないそうでどんな人物かはわからないそうだ。
ただ【ロイゼン王国】から出てきた人達の話を一度聞いた事があるそうでそれによるとなんか小さくて可愛いらしい。
その話を聞いたハルトは思わず「それってちい◯わ!?」と言ってしまった。もちろん異世界にちい◯わがいるわけないので完全にハルトの勘違いである。
「よし終わった」
ハルトがよくわからない勘違いをしている頃話を終えて揉み洗いに専念していたアリアがハルトのパンツを持ち上げて言った。パンツを広げたままアリアはハルトの方を向くと「ひとつもやってないの?」とシノのあれこれが入った桶を見て言った。流石に女の子のは出来ないと言い張るがやらないとダメとアリアに強く言われてしまい仕方なくやることにしたハルトはてきとうに桶からひとつ引っ張り出した。
引っ張り出したのは紛れもない女性用のパンツ。
そうパンツだった。
パンツを掴んだハルトはどうすればいいのかわからずとりあえず広げてみた。しかしこういう時はタイミングが空気を読むことが出来ないようでに運悪く小屋の扉が開いた。そして案の定、扉を開いたのは家に置いてきたシノだった。
「ハルト」
「あ、いや、違うぞ。これはアリアさんにやれって言われて」
じーっとシノに見られていたハルトは必死に誤解を解こうとするがその焦り具合が余計に誤解を確信へと変えていってしまっていた。そしてシノは一歩も動かずハルトを見ながら声をかけた。
「ハルト、なんで私のパンツみてニヤニヤしてるの」
「ニヤニヤなんかしてない!!! 絶対に!!!」
「ハルト、変態」
「なんでそうなるんだよォォォ!!!!」
あらぬ誤解をされながらもハルトはパンツを手に持ち叫んだのであった。
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