「花は桜 君は美し」

風月 結花里(ふづき ゆかり)

第1話 元カノからの電話

テレビのニュースでは、今日は春の嵐になると報じられていた。 窓の外を叩く強い風と雨音。こんな日は彼女のことを思い出す。


俺は3年間交際していた彼女がいた。当時、まだ大人になり切れなかった俺は、忖度なしてストレートに自分の意見を伝え、相手にこれを言ってしまったらダメだろうということまで言ってしまい、彼女を傷付ける結果となるとわかっていながら、素直になれない自分が許せなかった。しかし、彼女は気丈に振る舞い、俺の性格も受け入れて俺の事を理解してくれていた。


高校卒業後に俺は大学に進学。そして彼女は看護学校へ進学。それぞれ異なった進路に進み、高校卒業と同時に春を終え、そのまま別れることになった。自然消滅と言ってもいいかもしれない。


大学の勉強とバイトとの両立で忙しなく過ごしていた俺は彼女とのことをずっと後悔していて、忘れることができずにいたが、自分から連絡をすることもなく、だからといって次の恋愛に踏み込む勇気もなく、ただ大学の課題や授業をこなし、バイトもしていた。


日々の生活に追われながら季節は過ぎていき、最初の1年間を終えた。彼女のことはいつも頭から離れなかった。でも自分から行動に出ることはなかった。

『愛梨(あいり)は今頃、どうしてるだろう?』

ふと、彼女の事を考えた。今更どうすることも出来ないのに……。そのタイミングで、スマホのLINE通話の通知が届いた、愛梨だった。すごい神タイミングだな、エスパーか?と思ったが、通知を見て俺は直ぐに3コール目で電話に出た。


「もしもし、愛梨なの…か?どうした?」

「陽樹(はるき)くん?久しぶりだね、元気にしてた?なんか急に声が聞きたくなっちゃってさ。迷惑だったかな?急にごめんね。うん、私、愛梨です。(かなり元気がない声)」

「久しぶり、そっちは元気か?どうしたんだ急に?いや、全然迷惑じゃないよ。愛梨、何があったのか?」

「うん、色々あってさ、なんか気がついたら、電話掛けちゃった💦陽樹くんは?」

「バイトと大学の課題とで忙しくしてるよ。愛梨は?」

「ごめんね……急に。どうしてるかなと思って、気がついたら…掛けちゃってた。声が聞きたくなってさ……、迷惑だったかな(涙声)。」

「そんな事ないよ、俺の方こそ色々申し訳なかったと思ってる。考えたら、俺って最低だよな。」

「全然、気にしてない。陽樹くんのことは分かってたから、だから……気にしないで(鼻をすすりながら)。」

「愛梨?どうした?泣いてるのか?」

「えへへ、バレちゃったか。ちょっと色々あってね…。もし良かったら、近いうちに…、会えないかな?」

「それは構わないけど。」

「来週末ってどうしてる?予定あるなら大丈夫だから、ごめんね。」

「来週の土曜日なら空いてるよ。」

「そしたら、久しぶりに会わない?いつもの場所で待ち合わせよう。」

「わかった。」

「うん、そしたらまたLINEするね。」

「わかった、それじゃあまた。」

そして通話が切れた。


電話の向こうの彼女は泣いていた、何があったのだろうか?とても心配だった。いつもの場所とは、俺達が高校時代に待ち合わせをしていた、地元の神奈川県の横浜駅だった。俺は、高校を卒業して、千葉県の柏市内でひとり暮らしをしている。通学に片道2時間強かかる為、高校を卒業してアパートを借りることになった。愛梨は都内の看護学校に通っているので、今も神奈川の実家にに住んでいる。横浜駅までは乗り継ぎもあるが、行けない距離じゃない。1年振りに愛梨に会うのは、緊張もするが、彼女の話を聞いて、今度こそ彼女の気持ちを汲んで、今までの非礼を謝りたい、そう素直に思えた。























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