イマサラオンライン

SAKA。

第一章:リスタートの前準備

第1話:再開―芸術的クイックターン―

『MMORPG「エクセレントリビア」10年の歴史に幕』


携帯端末の画面に踊るその文面を見て、照山楓てるやまかえでは驚愕に眼を見開いた。


それは彼女にとって思い出のゲームであった。


既にログインすらしなくなりそれなりに年月を経ていたが

それでも友人と共に遊んだ記憶は今もなお心の中で輝いている


そんなゲームがサ終するとあって気付けばゲーム機を起動していた。



--------------Now Loading-----------


ゲーム「エクセレントリビア」の舞台となる大陸、


そのほぼ中央に位置する王国の広場。


モニターに映し出されたかつて呆れるほどに見た景色を目にして

楓は思わず感慨にふけった。


キャラIDとパスワードを記録していた事と

セールの時に思わず買ってしまってそのままだったDL版の存在のお陰で

彼女はログインを止めたあの頃のデータのまま、この地に再び降り立っていた。


当然の事ながら、かつて作ったアバターもそのままだ


長身黒髪ポニテの武者鎧の様な物を纏ったそのキャラは名を「モミジ」という。


趣味全開でキャラメイクした結果、性別と髪色以外楓とは正反対みたいになったが。


公式より通達されたサービス終了の時期は今から約半年後

さて半年間何をするかと考えているとお知らせの通達音が響いた



▶カレンがログインしました


「………は?」


画面を見る、モミジの隣に現れた


忘れもしない金髪碧眼、拘ったと豪語した良い感じの色

飾り気の薄い黒のローブは確かに友の趣味だった


友人、町田花恋まちだかれんのアバター「カレン」がそこに居た。



「自分が楓だからってモミジはちょっと安直じゃない?」


と言った口でお出しして来たのが本名そのままだったので喧嘩したあの日

二人で苦労してボスを倒し、喜びを分かち合ったあの日

二人して野良パーティに参加して迷惑かけた時もあった


恥をかいた事を含めて尚もゲーム内で築き上げた楽しい思い出の数々が蘇ってくる…



だから…だからこそ解っている、ここにカレンが居るはずがない


のアバターがここに来れるはずがないのだ


その時通達音と共にメッセージが届いた


▶カレン:楓ちゃん…?


コントローラーは疾風の如くログアウトを選択し

空いた手はゲーム機の電源を落としモニターの電源もついでに切った。


----------------------------------------------------------------------------------


まだ変な汗が引かない、心臓はバクバクなっている

幾ばくかの呼吸の後にようやく治まったが身の毛もよだつとはこういう事だろうか?


「………寝よう!」


こういう時はとっとと寝るに限る


寝れるとは到底思えなかったが楓はベッドに潜り込み強引に目を閉じた


さっきまでの事を考えない様にしながら。

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