許嫁の美少女と同居するラブコメが始まったんだが、俺は幼馴染を選びます

湯島二雨

幼馴染がいるのに許嫁ができた

 美しく光り輝くビー玉。

俺は自分の部屋のベッドに寝転がりながら、ビー玉をぼんやりと眺めていた。


俺は黄沢きさわりく、高校生。

趣味はビー玉を眺めること。このビー玉はただのビー玉だが、俺にとってはとても大事なものだ。



コロコロ……


「あっ……!」



そのとても大事なビー玉をベッドから落としてしまった。床をコロコロと転がっていく。

俺は慌ててすぐにベッドから降りてそのビー玉を追いかけた。



スッ


「!?」



転がったビー玉を拾ってくれた人がいた。



「はい」


拾ったビー玉を俺に渡してくれた。


「あ、ありがとう」


「そういうのなくしやすいから気をつけなさいよ」


「わかってるよ」


このビー玉は、本当に大切なものだからな……


……

……



「―――って、誰だあんた!?」


ビー玉を拾ってくれた1人の少女に問いかけた。

拾ってくれたことには感謝しているが、ここは俺の部屋で俺しかいないはずなのに、いつの間にか知らない人がいてメチャクチャビビった。


マジで誰だ……

俺が忘れてるだけで知り合いだっけ?

俺は目の前にいる少女を記憶の中から探してみる。


脳細胞をフル回転してよーく考えろ……もし知り合いだったら失礼すぎる、絶対思い出さないと……

うーん、うーん……



…………


いや、やっぱり知らん。本当に誰だこの女。


赤髪のロングヘアで、スレンダー体型で目つきが鋭い少女。

一体何者なんだ。


いきなり見知らぬ女が自分の部屋にいて動揺を隠せない。落ち着くまで時間がかかった。




―――




 「あたしは赤田あかだうみ

あんたの許嫁。今日からあんたと一緒に住むことになったわ」



「―――…………

……? ……? ……

いやいや、何言ってんだよあんた。頭大丈夫か?」


「それはこっちのセリフよ。あんたの親から説明されたはずだけど」


「知らねぇ。そんな話は聞いてねぇ」


「はぁ!? そんなはずないわよ」



『~~~♪』


その時、俺のスマホに着信音が。

画面には親父の名前が表示されていた。親父からだ。あまりにもちょうどいいタイミングだ。こっちの様子がわかってるんじゃないのかと疑いたくなるくらいだ。



「……はい」


『おお陸か。パパだよ』


「親父……いきなり俺の部屋に女の子が来たんだが……」


『ああ、その子はお前の許嫁だ。今日からお前の家に住むことになった。

もっと早く言わなきゃならなかったんだが言うのすっかり忘れてたよ……てへへ。

まあそういうわけだからよろしく~』



通話終了した。

てへへじゃねぇよ。おっさんがてへへとか気持ち悪すぎるんだよ殺すぞ。



「……まあ……たった今説明があったよ」


「うん」


赤田海と名乗った女は頷いた。



「……まあ、そういうわけなのよ」


「ちょっと待て! こんなもん納得できるか!!」


「うるさいわね! あたしだって納得してないわよ!! なんであたしがあんたと一緒に暮らさなきゃならないのよ!!

絶対にイヤだけどあたしたちの親が勝手に決めちゃったんだから仕方ないでしょ!? とりあえずお試しって形で一緒に住んでみろって言われたの!! だからどうにもならないのよ!!」


「……なんだよそれ……んなもん勝手に決めんなよ……!」


「もう今から文句言うのはナシにしましょう。無駄だから」


「いやちょっと困るんだけど……!」


そこで赤田は俺をビシッと指さした。



「一緒に暮らすって言っても別に仲良くしなきゃいけないわけじゃない。あたしたちの相性が悪ければ親たちも婚約解消してくれると思うから。

だから一切関わらないようにしましょう。緊急時以外は一切話しかけないで! わかった?

はい話終わり! じゃああたしはこれで」



赤田は俺の部屋から出ていった。

俺はポツンと取り残される。


「っ……マジかよ……」


俺は弱々しい声でそう言うことしかできなかった。




―――




 その日の夜、俺はリビングのソファーに座っていた。


「はぁ……マジであの女と暮らさなきゃいけないのかよ……」


マジでいきなりすぎて困惑しかない。一切関わらないって言ってたが、1人暮らしの家にいきなり住人が増えるなんて、心の準備が……



「―――あ」


「!?!?!?」



俺は目玉が飛び出るかと思った。

目の前にいるのは赤田。バスタオル1枚だけの姿だった。

風呂上がりか。風呂上がりでリビングにやってきた。


バスタオル姿の女子が目の前にいる展開、俺は脳がフリーズした。



「なっ……なんであんたがここにいるのよっ!?」


「何言ってやがる! 今日からてめーが俺の家に住みついたんだろうが!!」


「ハッ……そうだった、今日からこいつと一緒に暮らすことになったんだった……

一切関わらないからすっかり忘れてたわ……」


「バカかてめーは!!」


今日から他人の家に住むってのに同居人の存在忘れて1人暮らしのつもりだったのか。うっかりミスじゃ済まされないバカだ。



バフッ!


「ぐっ!?」


赤田がクッションを俺の顔面に投げつけてきた。

次から次へと投げつけられる。



「とにかくどっか行け! 出てけ変態!!」


「出てけってここ俺ん家だぞふざけんじゃねぇよ!!」


「うっさい出てけ!!」



ドカッ!!


俺はリビングから追い出された。ていうか蹴り出された。



……あ……あ……!!

あんのクソアマ~~~!!!!!!



絶対無理!! あんな理不尽凶暴女と暮らすなんて絶対無理だ!!




―――




 翌朝。学校に行かなければいけない時間だ。


「あたしたち同じ学校なのよね……いい? あたしたちが一緒に住んでるってこと絶対に誰にも言っちゃダメよ!!」


「言われなくてもわかってるわ!」


「バレたら殺すからね!」


「うっせぇな!!」



俺と赤田は口ゲンカしながらドアを開けて外に出る。

外の光景を見た瞬間、俺はドキッと固まった。



「りっくん……?」


「そ、空ちゃん……!」



青髪で、肩まで届くくらいの長さのショートヘアの女の子。俺と同じ学校の制服。

青野あおのそらちゃんがそこにいた。



「ん……? 誰?」


赤田の言葉に返事する余裕が今はなかった。




 少し時間を置いて、俺は空ちゃんを赤田に紹介することにした。



「彼女はとなりに住んでる俺の幼馴染で、青野空ちゃんっていうんだ」


「よ、よろしくお願いします……」



空ちゃんは赤田にペコッと頭を下げる。

空ちゃんは清楚系でおとなしい性格の女の子だ。赤田にあいさつする時も少し緊張気味であった。



「へぇ~、幼馴染がいたのね」


「ああ、幼稚園の頃から一緒だった。小さい頃はよく遊んでた」



小さい頃に空ちゃんと遊んでた記憶はハッキリと脳内に残っている。

空ちゃんは昔からちょっと内気で気が弱い感じで、守ってあげたいと思わせる女の子だった。それは今もほとんど変わってない。



「ふーん……」


赤田は空ちゃんをジロジロと見る。その視線はちょっとイヤな感じに見えた。


「な……なんですか……?」


空ちゃんも萎縮しているような感じだった。赤田の顔を見れず、俯いていた。

なんか空ちゃん怯えてるな。ちょっと赤田に注意しようかなと思った瞬間。



「別に……おっぱいすげぇなって思っただけよ」


「っ……!!!!!!」


「なっ……おい赤田!!」



なんてことを言うんだ赤田!

いや、確かにその……空ちゃんは昔から変わってないとは言ったが、ものすごく変わってる部分はある。


赤田の言う通り、空ちゃんは胸がでかい。制服のボタンが引っ張られててボタン飛ぶんじゃないかってヒヤヒヤするくらい。


小4か小5くらいから膨らみ始め、女子高生となった今では立派にたわわに発育している。

正直に言うと俺も空ちゃんの胸をすごく意識してしまっていて、できる限り見ないようにしているが、やはりものすごく気になる。俺も年頃の男だから許してくれ。


確かに胸が大きい空ちゃんだけど、本人に直接言うか普通!? 信じられん、デリカシーないのか赤田には。普通にセクハラだろうがセクハラ!



「~~~っ……」


空ちゃんは顔を真っ赤に染めてさらに俯いてしまった。赤田のせいでなんか気まずい空気になっちまったじゃねぇか。どうしてくれるんだ赤田。



「……そっ……それで……りっくん、そちらの方は……?」


気まずい空気を最初に打開してくれたのは空ちゃんだった。恥ずかしそうに勇気を振り絞った感じだった。話題を変えてくれてありがとう空ちゃん。



「ホラ、自己紹介しろ赤田」


「はいはい、わかったわよ……

あたしは赤田海。まあ一応、この男の許嫁」


「!? いっ……許嫁!?!?!?」



おとなしい空ちゃんが急に大きな声を出したもんだから俺はビビった。

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