第24話:激戦区

『さあ、一斉にスタートしました。1番のイーグレットと3番のシーブリーズが抜きんでてレースを作っていきます』




やはり大逃げの二人は最初からロケットスタートを決めに来たか




《シーブリーズ……いい逃げだな。相手にとって不足なしだぜ》




《…………南海道の先駆者。その実力、見せてもらうぞ》




先頭で2人がテレパシーを使って会話している




『おおっと!いつもは後方のブロッサムが今日は逃げる二人にぴったりとくっ付いてるぞ!』




そして驚いたのが、いつも後方であたふたしているブロッサムが果敢に前に出ている事だ




《負けるのは嫌だ!負けるのは嫌だ!》




『殿は相変わらずホープ。おおっと!何と横一列にホープとシーブリーズ、イーグレットを除く全員が並んだ!前に3人!中団に10人!後方に1人!このような隊列見た事がありません!』




『さすがミラクルチャージが選んだ選手達。予想外のレース運びをしてくれますね』




いや、違う。この隊列は……私を前に行かせない作戦だ




《すまんなホープ。あんたの十八番の追い抜きは簡単にはさせへんで》




《ホープ……。今一番怖いのがお前だ。だが今回は勝たせてもらう!そしてこのレパード様と一緒にいい酒を飲む権利を与えてやろう》




この隊列だと前に行くには、思いっきり端に寄って抜くしか方法はない。しかし、それではスピードダウンし、抜く事事態不可能




談合しているなら確かにこの作戦はうまくいく




だがしかし、たまたま全員がこのような作戦に出たのであれば、中盤以降この列は崩れるはずだ




『おおっと!第2コーナーの終わりでミラクルチャージが早くも前に出た!ブロッサムに追いつく追いつく!』




《ブロッサム、仕掛けるのが早すぎるわよ。スタミナ持つ?》




《正直苦しいです!でも!今日こそは咲かせたいんです!このまま蕾で終わらせたくない!》




普段控えめな彼女からは考えられないほどの闘志を遠くからでも感じる




まじで開花するんじゃないでしょうね?




《ホープちゃん。凄く考えてるわね。面白いわー》




テレパシーを通じてコスモが語り掛ける




《さすが先輩の弟子達ねー。でもー勝つのは私よー》




『何と!コスモポリタンも速度を上げ前に出たぁ!』




『どうしたのでしょうか?短距離走並みのスピードでレースが展開していきます!このレースは長距離ですよ!ありえない!』




《おいおいおい!大逃げの意味がないじゃねえか!すぐ後ろに先輩とブロッサムにコスモ……マジできついぜ》




大逃げの有利な所は終盤まで集団に飲み込まれないという点がある




だが、今回のレースは既に後方に数人の飛行少女が迫って来ているのだ




逃げの飛行少女が恐怖する事




それは、終盤にいつ来るか抜かれるか解らない恐怖心




それが早くも来ている




そしてその恐怖心がメンタルを傷つける




『イーグレットとシーブリーズの速度が僅かだが落ちたかのように見えます。その隙を狙ったかのようにミラクルチャージが並んだ!ブロッサムもその後ろを懸命に追いかける!』




『このレースに中団はありません!他の飛行少女達もどんどん前に出ています!早くも第二の直線で先頭と後方。はっきりと今別れました!スタミナは持つのか!?』




ここにいるのは手練れのレーサー達。自身の限界を知り尽くしているはずだ。




「あせるな……あせるな私……」




今先頭に交じっても飲み込まれるだけ。それは避けたい




後方から見える景色を観察し過ぎている私にそれは出来ない




《何やあんたら!?そんなに急いで体力尽きるで!》




《長距離レーサーを舐めないでねマルガリータちゃん。というかよく付いてこれるわね。さすが元長距離レーサーだった事だけあるわね》




《ふん!少しの間だけや。すぐに稼げる難解コースに鞍替えしたけどな。勝利のプラチナチケットは渡さへんで!》




《あらあらー熱いわねー。そこまでして名誉が欲しいの?》




《名誉やない!金や!このレース、C級といえど難解コースよりも多い賞金が出る。金は何ぼあっても困らんからな!貴様ら貴族に中流の気持なんか解ってたまるか!》




怒気を帯びた荒々しい感情が伝わってくると同時に勝利は譲らない自信たっぷりな感情も伝わってくる




空気が重い。ここまで重いレースは初めてだ




『さあ、第三カーブを終えてました。以前として殿のホープを除く全員が先頭に並び展開が予想不可能なレースとなりました』




『誰もが勝ってもおかしくないレース!この世界にはオッズという壁は存在しないのか!?』




《諸君……ここからが私の本気だ!》




「うぉぉぉぉぉぉぉ!ドラゴンバレット!」




その叫び声が聞こえた瞬間、先輩が一気に前に飛び出したのであった








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