第15話:翼人の秘話

「噓でしょ……」




翌日、私の背中に半透明の深紅の翼が生えていた




朝、目が覚めると背中が妙に熱く違和感を覚えた私は起きて鏡を確認した




鏡を見るとレイナと同じように翼は微かに分離しており、微かに揺れている




隣にいるレイナを見ると凄く泣きそうな顔で私を見ている




ちなみに彼女の翼は宿に戻る前に自然と消えていた




「ごめんなさい……ごめんなさい……」




「あー、言いたい事が解ったわ。つまり、風邪みたいに移ったって事?」




そう言って彼女の頭を優しく撫でる




「うん……。仕組みは解らないけど、そう……みたい」




状態は身体がとても軽く、実は先ほどから地面から数ミリだが浮いている




そして五感が研ぎ澄まされ、彼女の甘い香りを強く感じる




「そうだ……お薬!」




そう言ってレイナはバックの中から青色の液体が入った小瓶を渡してきた




「飲んで!今すぐ!」




急かしてくる婚約者に応えるように、私はすぐさま、小瓶を飲んだ




「に、苦っ!」




途端にこみ上げる強烈な苦み




背中の温かさが和らいだと思った瞬間、ふと鏡を見ると背中に生えていた翼が消えていた




足も地に付いている




「あ、あなたいつもこんな苦いのを飲んでるの?」




「うん。もう慣れたよ……でもどうしよう。移るなんて聞いた事ないし……」




「とにかくフィオナさんに聞いてみましょうか。南海道に戻りましょう」




そう言ってまだ落ち込んでいるレイナの頭を優しく撫でたのであった






瀬戸大橋をタクシーで渡り、私達は急ぎ足でナタージュ邸を訪れた




「ああ!ホープさん!大丈夫ですか!」




執務室に入るとフィオナさんが血相を変えて、私に駆け寄って来る




普段冷静沈着なフィオナさんがここまで慌てさせるなんてね




「ええ、レイナが服用していた薬を飲んだらすっかり治りましたよ」




「いいえ、そうではないのです。吐き気とか左胸付近に痛みが走るとかないのですね!?」




「ええ、大丈夫ですよ。異常なしです」




「そうですか……」




フィオナは深いため息をついた




「……えっと、この症状って永久的な物なんでしょ?」




そう。この慌てようから、もしかしたらが確信に変わった




私は、もう、人間ではないのだ……




「はい……。一度、翼人化した者は二度と治りません。唯一の方法が症状を抑える服薬治療となっています」




「そうですか。フィオナさん、貴方とレイナは……」




「はい、私達は本当の母娘ではありません」




そう言ってフィオナさんは本棚の側面まで移動し、何かに触れた




すると本棚がゆっくりとスライドし、階段が現れたのであった




「付いてきてください。真実をお話いたします」




長い階段を降りると、そこには閑散とした部屋で奥に巨大な空の培養槽と筐体のみが置かれていた




「今から100年前。追放された天才科学者、Dr.イザナミが復讐の為に戦争を起こしました。その時に産み出されたのが人造飛翔兵器【翼人】でした」




聞いた事がある




超能力者であり天才科学者であったDr.イザナミ


彼は国の反対を受けながらも極秘に翼の生えた人造人間【翼人】を産み出した


その行為が学会に知れ渡ると、彼は前代未聞の国外追放処分となった




そして、数年後。彼は無国籍軍という謎の軍隊と手を組み、数多の翼人を引き連れ空から日本に宣戦布告をしたのであった




のちに厄災と呼ばれる出来事である




結果としては日本を壊滅的に追い込むも、4人の勇者である飛行少女達により野望は打ち砕かれ、日本に平和が戻ったのであった




「厄災後、多くの翼人が処分されました。しかし、我々はとある物を発見したのです」




「つまり、製造途中の翼人って事ですよね……。そしてこの装置を見る限り……」




「はい。私の祖父達は型式番号R117SO1987Xという培養槽を発見。極秘にこの装置を運び出し、厄災の被害が少ないこの地に研究施設を設立しました」




「R117SO1987X、そこから私はレイナと呼ばれてたみたい」




レイナが辛そうに語った




「何のために……と言いたい所ですが、大方非公式の実験と研究材料として回収したんでしょ!」




私はフィオナさんに詰め寄った




「ええ、ホープさんの言う通りです。我が一族は極秘裏で利益最優先、人権無視でこの企業を築いてきました」




その言葉と共に、私はフィオナさんの胸倉を掴んだのであった








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