第6話:C級レース朱雀賞

『全国の空繰遊戯ファンの皆様、お待たせしました。本日のメインレース【朱雀賞】。南海道連合郡に吹く風は静か。飛行少女達の実力が存分に発揮できる力場となっております!』




猛特訓から1週間後、私は南海道の北東にある『瀬戸内レース場』で他の飛行少女達と同じように披露専用場を低速度で飛んでいた




『注目すべき選手はやはり、いきなり関ケ原に行くと決意表明したホープ選手でしょうか!』




『そうですね。しかし、ホープ選手の体重は前回の壇之浦レース場よりもマイナス4キロとかなり体重が落ちてますね』




『顔色にも不安が見えます。現在9番人気と人気は高くはないですね』




『この特別レースには強豪達が集まる場所ですからね。1番人気【コスモポリタン】は長距離の女王と呼ばれるほどの実力者。2番人気【シーブリーズ】も長距離で好成績を収めてます』




『コスモポリタン選手、相変わらずワインボトルから手を放しません。そして顔は真っ赤です』




『アルコールで興奮状態を発動させ、スピードを限界まで上げる作戦ですからね』




『アルコールも解禁され早1年。そしてこの1年でコスモが広がりました』




私は9番人気か……。てことはオッズは予想から60倍くらいとみた




まあ無理もない。




マークするのはコスモポリタン




アルコールのおかげで、抑えていた負の感情を開放した怖いもの知らずとなった飛行少女




私と同じ15歳。短命である私達飛行少女は特例で14から酒が飲める




その特例を利用し、女王まで伸し上がった




こいつに勝てなきゃ関ケ原で戦えない




こういった特別な奴らはあそこにはごまんといる




だからこのレースを締め切りギリギリに申し込んだんだ




「みんなー!今日も私に沢山賭けてねー!」




私の前を飛行するコスモポリタンが観客に手を振ると歓声が上がる




その観客達の中にイーグレットとレイナの心配そうな顔が見える




「ホープ……一応単勝でお前の空券100円で買っといたけど無茶はするなよ」




「ホープ……」




まあさすがにこの一週間地獄のような訓練だったからね




顔にも出るわけだけど、コンディションは普通なのよね




もう吐かない身体になったし、後はこいつをぶっ潰す事に集中しよう




やがて披露専用場を出て、私を含む飛行少女達はレース場へと歩いて向かう




誰もが一言も話さずひたすら歩く




レースの目的は人それぞれ




賞金目当てな者




名誉を得たい者




承認欲求を満たしたい者




そして、出ないと大切な何かを失う者




長い階段を上り、それぞれがスタートラインのカタパルト置き場に出ると割れんばかりの大きな歓声が上がった




湖の周りに設営された観客席は満員の観客で埋め尽くされており、湖の中心には人口の浮島




そして浮島から南の観客に向けて出た横長のカタパルトデッキ




競馬で言えばスターティングゲート、競艇で言えばスタートラインみたいなものだ




私達飛行少女はここから、機械の力によって勢いよく射出され大空を翔るのだ




ちなみに予算の都合から特別レース以外では、何もない鉄板から走って大空に飛び立つのがデフォルトとなっている




私は大外の12番なので一足先に奥の行き、カタパルトにスタンバイ




そして11番のコスモポリタンも観客に手を振りながらスタンバイする




ガシャンと音がし、足がレッグブースターによってロックされる




「ホープちゃーん。気分が悪かったら棄権してもいいのよー」




間延びした声で軽く挑発してくるコスモポリタン




「そちらこそ、酔いが回って湖に落ちないでよ酔いどれ女」




負けずに挑発し返す




そういっている間に他の選手達の足もブースターにロックされていく




『さあ、各選手位置に着きました。朱雀賞まもなくスタートです!』




そしてレース開始の重厚なファンファーレが鳴り響く




『3!2!1!レディィィィィィ』




シグナルの赤色がゆっくり点滅し緑になった直後、私達12人の飛行少女達は一斉にカタパルトから射出され、一斉に大空に飛び立ったのであった




『ゴォォォォォォォォォォォ!』




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